
世界がトランプ劇場第2幕に翻弄(ほんろう)された2025年だった。ベネズエラ攻撃で幕を開けた26年も、トランプ政権の下、超軍事大国・米国を軸に動くことになるのか。
関税、パレスチナ自治区ガザ和平とウクライナ停戦への介入、イラン攻撃、一方で21年までの1期目と同様、同盟国に対する国防の強化と自立への要請はさらに強まった。すでに欧州、アジアの同盟国の国防費増額は一つの大きな流れとなっている。
1期目から続く、トランプ外交の大きな成果とみるべきだろう。だが、ウクライナを巡って欧州との亀裂が強まっていることも確かだ。トランプ氏の露骨な親露姿勢は警戒すべきだ。
一方でトランプ氏は、世界の八つの紛争を終結させたと豪語する。和平協定などを交わしたというものの、そのうちの多くで紛争、衝突は続いている。恒久的和平へ「解決した」といえるのはアルメニア・アゼルバイジャンだろう。両国間の交渉は続くが、30年以上にわたって繰り返されてきた衝突を終結させた。
今後、米国の関与の下、アゼルバイジャンの本土と飛び地ナヒチェワン自治共和国をつなぐ回廊「トランプ・ルート」の設置に取り組むという。米国企業などによるインフラ整備も含まれ、ビジネスマンとしてのトランプ氏の手腕の発揮のしどころだ。南を米国の「宿敵」イランと接し、封じ込めにも都合がいい。
そのイランで昨年末から、反体制デモが吹き荒れた。死者数千人とも数万人ともいわれる「虐殺」に世界の耳目が集まった。1979年のイラン革命後、繰り返されてきたデモだが、今回も政権側の勝利に終わることになりそうだ。
トランプ氏は攻撃の可能性を示し、米軍にも動きは見られたものの、最終的に見送った。これは実際には「攻撃できなかった」のではないかとの見方もある。ベネズエラ攻撃へカリブ海に大規模な軍事力を投入し、手薄になっていたこともあろう。稼働中の空母がわずか2隻にとどまり、軍事的圧力にも限界があった。
経済制裁、イスラエルからの攻撃を受けて弱体化が進んだイランだが、今後、国内への弾圧を強化、核開発を推進することになる可能性もあり、一つの懸念材料だ。
一方でイスラエルとイスラム諸国の関係を正常化する「アブラハム合意」にサウジアラビアを取り込みたい米国だが、ガザ衝突が落ち着かなければ困難であり、かつてのような勢いはない。
トランプ政権は新たな「国家安全保障戦略」の下、中東、欧州、アフリカへの関与を弱めていくとみられ、中東の「イスラエル一強」は当面、続くとみられる。
アジアに目を移すとウクライナ戦争の長期化で経済、軍事での弱体化が進むロシア、経済の低迷、西側との緊張が続く中国、事実上の「核保有国」へと邁進(まいしん)する北朝鮮と不安定要因には事欠かない。
ロシアは西部ウクライナ戦線への投入で極東が手薄になっていることがあり、中国による経済的影響が強まっている。プーチン露大統領は昨年12月に中国人へのビザ緩和措置を取った。また、ウクライナ情報機関の昨年10月の分析によると、ロシア極東に最大で中国人200万人が居住、影響力を増しており、「クレムリンは極東の支配を失いつつある」と指摘した。また中国製品の輸入増、対中エネルギー輸出の増加など貿易での対中依存も強まる。
蜜月がうたわれる中露だが、中国によるロシア極東の「後背地化」は、台湾侵攻の可能性、東南アジアへの進出を考えれば、日本にとって懸念材料だ。
トランプ氏は「(ミサイル防衛システム構想)ゴールデンドームの構築に不可欠」とデンマーク領グリーンランドの領有を主張する。だが、グリーンランドにはすでに弾道ミサイルを監視する米軍基地が設置され、アラスカ、西海岸、東海岸に配備された監視網と共に、米本土はカバー済み。
さらには、米軍基地の追加配備などはデンマークが認めれば可能であり、領有主張の根拠は薄い。領土的野心とも取られかねず、欧州との対立にもつながっている。現状変更をもくろむ中露もその行方に注目しているはずだ。
トランプ氏が支持を明確にしているマッキンリー大統領(在職1897~1901年)への追随との見方もある。マッキンリーの関税、移民、外交・安全保障政策はトランプ氏と似ている。米紙ワシントン・タイムズは「トランプ氏とマッキンリーは、拡張主義的な政策でも共通している。マッキンリーはフィリピン、グアム、プエルトリコを掌握し、ハワイを併合した。米国領を大幅に拡大した最後の大統領となった」と指摘している。領土拡大で歴史に名を残すにはグリーンランドは最適な地なのかもしれない。
(本田隆文)
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