停戦に応じないプーチン大統領
2022年にロシアはウクライナに侵攻した。この時の世界の軍事関係者・軍事評論家の多くが戦争は短期間でロシアの勝利で終わると判定されていた。戦争が始まるとロシア軍はウクライナ北部・東部・南部を占領しウクライナ首都付近まで侵攻した。だが世界の予測に反してウクライナ軍が抵抗しウクライナ北部からロシア軍を撤退させた。
ウクライナ軍は少ない戦力を補う目的で民生品のドローンを兵器として投入する。するとドローンの能力が覚醒し偵察・攻撃・軽運搬など戦果を拡大する。ロシア軍もドローンの有効性に気づきウクライナへの攻撃に使うようになった。
外交ではアメリカのトランプ大統領がウクライナとロシアの停戦交渉に動くが進展が見られない。トランプ大統領はロシアのプーチン大統領寄りの停戦交渉を行っていたが、プーチン大統領が停戦に応じないと判断するとウクライナ寄りの停戦交渉に変更するなど不安定な状況が続いている。
非対称戦争の流行に乗った末路
第二次世界大戦後から国家間の大規模な戦争が減少した。冷戦が終わると傾向が加速し、その代わりに地域紛争と呼ばれる民族紛争が増加した。さらにテロ組織・ゲリラ組織が国家に挑むことが増加する。この典型が2001年9月11日にイスラム過激派テロ組織アルカイダがアメリカで実行した同時多発テロ攻撃になる。
東西冷戦は大規模な戦争に備えた期間だった。このため東西両陣営は1日10万発の砲弾を撃てる生産体制が基本だった。しかも大砲の砲撃期間は最低でも1週間だから、砲弾を生産する工場と生産ラインの維持が基本だった。だが冷戦が終わり大規模な国家間の戦争がないと判断した世界は、段階的に砲弾の生産ラインを縮小した。
その理由は「今後は国家間の戦争はない」との判断だった。さらに911テロから新しい戦争と言われたテロ組織との非対称戦争が流行する。このため既存の兵器は軍隊との戦闘からテロ組織・ゲリラ組織との戦闘に備えた装備・訓練に移行した。
この時に一部の軍事関係者から「今の状態は季節の変わり目のようなもの。国家間の戦争が終わったのではなく、いずれ国家間の戦争が戻る」と主張する者がいた。だが将来を予測した一部の声は無視され、世界規模で非対称戦争が流行した。
実際にアメリカが2001年から対テロ戦争を実行している間に、中国は中国軍の近代化と軍事力強化に邁進していた。アメリカ海軍は沿海域戦闘艦(LCS)を開発していたが、フリーダム級1番艦は2008年に就役するが2021年に退役。インディペンデンス級1番艦は2010年に就役するが2021年に退役となった。退役の理由は沿海域戦闘艦の軽装備では中国海軍の艦艇には対応が困難だから。
世界は2010年代から中国の軍事力強化に国家間の戦争を危惧したが本気で対応する国はなかった。何故なら一度放棄した生産ラインを復活させることは資金からも難しく様子見をする国ばかりだった。軍隊を縮小し兵器も非対称戦争に適した物に変えていた。今になって国家間の戦争に回帰するなど政府が予算を認めるはずがない。
軍事力強化を求めるヨーロッパの反省
そんな時に2022年にロシアがウクライナに侵攻し世界は国家間の戦争に回帰したことを思い知らされる。世界の多くがウクライナを軍事支援するが予測を超えた物資消費に驚かされる。世界が国家間の戦争はなくなり大砲を用いた長時間の砲撃戦など発生しないと思われたが、ウクライナ軍とロシア軍の砲兵部隊は長時間の砲撃戦を実行した。
このため世界がウクライナ軍に提供した砲撃システムは精密射撃を前提としていたから、長時間の砲撃で故障するか砲身が使えなくなる。修理するにもウクライナから製造元の本国に戻すから戦力外になる砲撃システムが多発した。さらに砲弾を生産する工場を縮小していたから砲弾の消費に対応できなかった。
これはロシア軍も同じで、第二次世界大戦中のソ連軍は1日10万発以上の砲弾を消費する軍隊だったが、今のロシア軍は1日2万から3万発の消費になっていた。ロシア軍は短期間で戦争が終わると判断したのか、生産ラインを増強していないことが勝利を逃した原因の一つになった。
■EUのドローン防衛システム、2027年末までの完全導入目指すと 対ロシア防衛を強化
https://www.bbc.com/japanese/articles/c5ypr227lgjo
ロシアの脅威を認識したヨーロッパの動きは早く、EU加盟国はドローンの脅威に対応する目的で対ドローンシステムの「完全運用を2027年末までに」実現する方針を示した。ドローンは高額なミサイルと比較すると低性能だが低価格。このため大量に運用できるドローンは攻撃に使うと防空システムを突破して損害を与えることをウクライナ軍とロシア軍が証明した。
ドローンを既存の兵器で撃墜できることは明らかだが数が多すぎる。このためEU加盟国は大量のドローンを用いた無停止攻撃に対応する必要性を認識した。だから今から2年以内の2027年末までに対ドローンシステム完全運用を急いでいる。それに対して日本を見ると将来の戦争に備えた動きが鈍い。これは自衛隊側が求めても政治家が許可しなければ進まない現実が存在する。
日本の危機
各国は政治家が軍政を担当し軍隊が軍令を担当する世界。このため自衛隊が予算と人員増加を政治家に求めても政治家が認めなければ進まない。欧米はウクライナとロシアの戦争を見て危機感を持ち国家間の戦争に回帰している。日本は1日10万発も砲撃できる生産ラインはあるのか? 政治家は10丁のマシンガンが24時間で100万発弾丸を消費することを知っているのか?

有事になれば日本国内で生産できないから外国から兵器・弾薬を購入する外交を完了させているのか? さらに今の自衛隊総兵力は約23万人だが、常備軍の総兵力は総人口の1%であり少子高齢化の要素を加えることを知っているのか? 今の日本であれば自衛隊の最大総兵力は80万人で軍縮規模では50万人なのだ。
ドローンを用いれば軍縮できると主張する者がいるが、ウクライナ軍とロシア軍を見るとドローンを用いても総兵力は逆に増加する現実を見ていない。何故なら人的損害に対応するには総兵力の多さが必要なのだ。
今の自衛隊は将来の戦争に備えた兵器と総兵力の増加が遅れている。さらに予備兵力の拡大とアメリカの州兵・ヨーロッパの国家憲兵・中国の武装警察のような準軍事組織の保有がない。州兵・国家憲兵・武装警察は準軍事組織であり戦略予備として運用される。ウクライナとロシアも準軍事組織を活用し戦争している現実を日本の政治家は理解しない。これこそが日本の危機だ。





