イスラエルと日本で動きあり
2023年10月7日にテロ組織ハマスはガザ地区からイスラエルに向けて2000発のロケットを発射。同時に空と陸からイスラエル南部に侵攻した。テロ組織ハマスはキブツ・レイム近郊の野外音楽イベントなどを襲撃した。テロ組織ハマスは1300人以上の民間人を殺害し一部の民間人を人質としてガザ地区に連れ去った。これに対してイスラエルは人質奪還とテロ組織ハマスの殲滅を行うため軍事作戦を開始した。
イスラエル軍の軍事作戦は長期化しハマスが人質を解放するが全員ではない。これに対してイスラエル軍は軍事作戦を継続。欧米からの仲介があるが進展がなかったが、2025年10月3日にアメリカのトランプ大統領が提案したガザ和平計画により、テロ組織ハマスは拘束している人質全員を解放する用意があると表明した。

イスラエルは10月4日に、ガザ和平計画の第一段階として人質全員の解放の「即時実行」に向けた準備を始めたと表明した。日本ではこの日、自民党総裁選が行われ高市早苗氏が第29代総裁に選出された。
人質に対するイスラエルと日本の違い
北朝鮮が日本人を拉致した拉致問題は1970年頃から始まり現在まで続いている。2002年9月に北朝鮮は日本人拉致を認め同年10月に5人の被害者が帰国した。しかし残された拉致被害者は今も帰国できていない。
日本政府は北朝鮮が国民を拉致したことを確認するが動きが鈍かった。一部の政党は北朝鮮による国民拉致を否定していた。しかし2002年に北朝鮮が日本人拉致を認めても日本政府は拉致被害者を全員帰国させる動きをしていない。
テロ組織ハマスが2023年にイスラエル領に侵攻し民間人殺害と拉致を行った。イスラエル政府の対応は早く、テロ組織ハマスの殲滅と人質奪還にイスラエル軍を投入した。この点が日本政府とイスラエル政府の致命的な違いだ。
話し合いでは解決しない
20世紀の戦争は総力戦であり、戦争で敗北し占領された国は日本とドイツそしてチベットなど数少ない。ドイツとチベットは敵軍が国土に首都を占領され降伏した。
日本の国土はアメリカ軍による爆撃などの戦略的火力攻撃(核を含む)だけで降伏していない。日本はアメリカ軍による本土上陸作戦による占領を潜在的に想定したことで降伏を選んでいる。
■国家戦略=外交×軍事
外交と軍事は国際政治の二本柱だが二人三脚ではない。外交と軍事を二人三脚にすると一人が倒れると二人目も倒れてしまう。外交が成果を挙げている時の軍事は不要でもない。外交が破断してから軍事が作戦を始めることも遅すぎる。外交と軍事の関係は「右手に剣、左手にコーラン」・「衣の下に鎧」であり、外交と軍事が単独で準備と進行を同時に進めることで真価を発揮する。
さらに国際政治は軍事を背景にした外交を行うのが基本。これが原因で外交と軍事は足し算ではなく掛け算の概念になる。このため敵軍を撃破すると敵国は国家戦略を失う。軍を撃破された敵国は交渉のテーブルに着くことになる。この典型が第二次世界大戦時の日本政府の対応。
■イスラエル、ガザ和平案第一段階の「即時実行」準備 ハマスの一部合意受け
https://jp.reuters.com/world/us/OCJAUMNL2VNFPIRVVTUDU7UGLA-2025-10-04/
イスラエル政府はテロ組織ハマスに対して戦闘と交渉を同時に進行した。イスラエル軍がテロ組織ハマスを包囲殲滅しガザ地区の一部に追い込んでいく。これが成功しテロ組織ハマスは一部の人質を解放した。だがテロ組織ハマスは人質全員を解放しなかった。これに怒ったイスラエル政府は殲滅作戦を継続し、追い詰められたテロ組織ハマスはトランプ大統領のガザ和平計画を飲んだ。このため敵軍撃破と占領は交渉の武器になることを改めて示した。
北朝鮮拉致被害者の救出を最優先せよ
2002年に北朝鮮に拉致された5名が帰国できた。その半年後に拉致家族の代表者が外務省を訪れて具体的な行動を求めた。だが外務省は北朝鮮に経済制裁などの強硬姿勢を行うと北朝鮮は証拠隠滅を図るため100名近い拉致者を殺す可能性を示唆。このため外務省は拉致家族の代表者は忍耐強く待てと返答した。
これは「戦いの原則」を無視した対応だった。「戦いの原則」には明確な目標を定めて徹底的に追求せよ(目標追求の原則)」がある。核兵器の開発と拉致によって身代金を要求するような政権は北朝鮮という国に宿った悪性腫瘍だから、対話と援助(内科投薬療法)では悪性腫瘍を大きくするだけで北朝鮮は死んでしまう。一日も早く外科手術(政権壊滅)で悪性腫瘍を切除しなければならない。これをイスラエル政府がテロ組織ハマスに対して実行した。
当時の小泉首相は「状況を見て考える」と発言。軍事の世界ではこのような態度を“状況戦術”と呼んで敗北する戦術と見なしている。「状況を見て考える」ことは日本が無策で日和見主義の外交であると表明していた。この点でもイスラエル政府と日本の致命的な違いを日本人に見せている。
日本がまず実施することを決めないのなら「他力本願」外交である。まず「日本は先制・主導的に何をするか」を定め、その達成を容易にするために国連や同盟国を利用するのが外交のあり方だ。日本の対北朝鮮外交は外国に任せる他力本願の外交から自力本願の外交に転換すべきだ。
日本の拉致問題を同盟国や国連で訴えても進展がないのは当然だ。日本政府が国民救出に動かず外国に丸投げした他力本願では“自国が日本に利用される”と認識する。だから同盟国も国連も動かない。
作戦目標を「拉致問題」一本に絞る
第29代総裁・高市早苗氏には北朝鮮に拉致された国民救出を実行して頂きたい。北朝鮮には核問題があるが、核問題と拉致問題を明確に分離して作戦目標を「拉致問題」一本に絞るべきだ。これまでの北朝鮮の動きを見ると、金政権の延命・経済支援を認めて「対話による拉致者の奪回」は不可能と断定する。拉致されている日本人の生命を見ると忍耐の時間は既に終わった。 イスラエル政府はテロ組織ハマスが人質を拉致すると直ぐにイスラエル軍を投入した。これが政府のあるべき姿だ。
第29代総裁・高市早苗氏は北朝鮮と交渉から始めるとしても、目標は全ての拉致被害者の奪回だ。交渉をネタに自衛隊による拉致被害者救出作戦の準備を同時進行させることだ。
交渉のネタは「在日北朝鮮資産の凍結」・「北朝鮮との往来・貿易の禁止」・「北朝鮮代表部の閉鎖」・「北朝鮮による直接・間接の情報・謀略工作の禁止」・「北朝鮮に対する情報・宣伝工作」・「北朝鮮人民による反金政権の育成」・「北朝鮮沿岸の封鎖」などである。
露骨に自衛隊が救出作戦を準備している姿を見せると同時に交渉する。外交と軍事を同時進行させ、北朝鮮が交渉で譲歩し全ての拉致被害者を解放すれば良し。北朝鮮が交渉に応じない場合はアメリカ軍の支援を受けながら自衛隊が拉致被害者を救出すれば良い。
高市早苗氏が拉致被害者の救出と国家の尊厳を守らないのであれば、国内で生活する国民のことなど考えない政治家であることを示す。高市早苗氏が拉致被害者よりも経済問題を優先することは国民を見捨てることを示唆する。これではリーダーではない。私はイスラエル政府のように自衛隊を用いた拉致被害者救出を願うばかりだ。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)





