

国連の信教または信条の自由に関する特別報告者ナジラ・ガネア氏ら4人の特別報告者は、東京地裁が今年3月に下した世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の解散命令について、国際自由権規約が保障する信教の自由の侵害に当たる可能性があると警告した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が1日、プレスリリースで特別報告者4人の主張を公表した。
警告を発したのは、ガネア氏と少数派問題に関する特別報告者ニコラ・ルヴラ氏、教育を受ける権利に関する特別報告者ファリーダ・シャヒード氏、平和的集会・結社の自由についての権利に関する特別報告者ジーナ・ロメロ氏の4人。
特別報告者4人は、地裁決定について「解散命令の根拠とされた不法行為判決は、『社会的相当性』の違反に基づいており、それが『公共の福祉』に対する重大な侵害を構成すると判断された。しかし、国連人権委員会がこれまで指摘したとおり、『公共の福祉』という概念は曖昧かつ無限定であり、国際自由権規約の許容範囲を超える制限を認める恐れがある」と指摘した。
日本も批准する国際自由権規約第18条は「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する」と定めている。特別報告者4人は、これらの権利の行使に対する制限は「国連人権委員会が解釈するところの同条第3項に定められた制限条件を厳格に順守しなければならない」と主張。国連人権委員会は過去15年以上にわたり、日本政府に「公共の福祉」という概念によって信教の自由を制限してはならないと勧告してきた経緯がある。
一方、特別報告者4人は、日本の法務省が今年5~7月に小中学生に配布した「こどもの人権SOSミニレター」を問題視し、「宗教的少数派に対する差別的な固定観念を強化し、正当な宗教や信仰の表現を児童虐待と直接混同させる危険性があることに失望している」と批判した。
SOSミニレターは、親や先生に相談できない悩みを子どもが法務省人権擁護部に相談できる仕組みだが、パンフレットには悩みの一例として「親から宗教を理由に学校の行事に参加させてもらえない」と記載している。
特別報告者4人は「特定の慣行や活動、特にエホバの証人を標的にしているように見える」とし、「こうした教材は、宗教的少数派に属する子どもを保護するどころか、いじめや疎外を助長する危険がある」と警告した。
SOSミニレターは、厚生労働省が2022年12月に公表した「宗教の信仰等に関係する児童虐待への対応に関するQ&A」(宗教2世虐待Q&A)に基づいているといわれている。ガネア氏らは昨年4月、このQ&Aに懸念を提起する書簡を日本政府に送付している。
特別報告者4人は「Q&A指針の差別的な枠組みが繰り返し使用されていることは、宗教的少数派を監視や行政的嫌がらせの対象とする、より広範なパターンを反映しているのではないかと懸念している」と表明した。(信教の自由取材班)
(国連人権高等弁務官事務所のサイトに掲載されたプレスリリースはこちら)






