トップ国際【連載】米露ウが描くウクライナ「戦後」(中)軍備増強に舵を切った欧州 トランプ氏交渉手腕に期待も

【連載】米露ウが描くウクライナ「戦後」(中)軍備増強に舵を切った欧州 トランプ氏交渉手腕に期待も

18日、ワシントンで会合に臨むトランプ米大統領(左から3人目)、ウクライナのゼレンスキー大統領(右から2人目)と欧州各国首脳ら(AFP時事)

米国と異なり、ロシアと陸続きで長い歴史を持つ欧州の露・ウクライナ和平への考えは、米国とは決定的に異なる。基本的に今回の米露首脳会談について、ポジティブな報道は少ない。ただ、1200日を超えるロシアのウクライナ攻撃に対して、解決策を見いだせない欧州首脳は、トランプ米大統領の交渉手腕に期待も寄せている。

欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)は、停戦や和平案に上っている領土交換案について21日、「プーチンの罠」と警告を発した。厳密に言えば、米露会談でプーチン大統領はまったく譲歩を示しておらず、たとえバンス米副大統領が「プーチン氏はこれまでにない譲歩を準備している」と主張しても欧州で信じる者はいない。

ロシアがウクライナに侵攻した3年半前、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長(当時)は「ウクライナ侵攻で、東西冷戦終結後にできた世界のフレームワークは根底から変わった」との認識を示した。そもそも対ロシア大西洋軍事同盟であるNATOは、ロシアが冷戦終結後も覇権主義的態度を変えていないことを痛感した。

侵攻後、マクロン氏などNATO加盟国首脳がモスクワを訪問し、プーチン氏を説得したが、プーチン氏の心を変えられた首脳は一人もいなかった。東方政策でロシアとの融和策を取っていたドイツのメルケル政権(当時)もプーチン氏に裏切られた。メルツ新政権は国防費を増額し、再軍備に舵(かじ)を切った。派兵には国内で強い反発があるものの、平和維持活動への前向きな姿勢を見せている。

ウクライナ派兵に積極的な発言が目立つフランスのマクロン大統領を、イタリアのサルビーニ副首相が最近、強く批判した。同氏の態度は、ウクライナ派兵に反対している他の欧州諸国の極右勢力と同じだが、メローニ伊首相は国内の調整さえつけば、派兵には抵抗しないとみられている。

NATO加盟国で突出した資金を拠出してきた米国は、NATOに対して、ウクライナ紛争の当事国である欧州加盟国が、和平実現後の「安全の保証」をすべきだと圧力をかけている。欧州は、トランプ氏の「EUは米国をだまし、米国に莫大な支出をさせてきた」という批判に応える必要に迫られている。

欧州諸国は定められたルールを守ることを優先させてきた。その原則からすれば、NATO加盟国でもないウクライナへの派兵はあり得ない話だった。だが、和平に本気度を示すトランプ圧力の中、ルールより実利という意味でウクライナの「安全の保証」に大きく一歩を踏み入れたことになる。中長期的軍備増強に欧州全体が舵を切ったため、対ロシア政策も大きく変わる。

今でもロシアが変わることを信じる欧州人は皆無である一方、本音ではプーチン氏に急接近したトランプ氏が、ロシアを短期間で変えてほしいという願望もある。今の流れを見ると、数年後にはウクライナをEU加盟国に取り込む計画もあるが、NATO加盟の時期は全く見えていない。

米露首脳会談で変わったのは、ロシアの報復を恐れて支援を小出しにしてきた欧州諸国が、米露主導で和平に一歩でも近づけば、ロシア不信は変わらなくても支援を躊躇(ちゅうちょ)するブレーキは弱まる可能性があるということだ。欧州の政財界からは、ロシアの脅威が薄まれば、冷え込んだ欧州・ロシア間の経済関係を元に戻すことに期待感を示す声も聞こえている。

(パリ安倍雅信)

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