2025年2月28日、米国のドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による首脳会談がホワイトハウスで開催されたが、激しい口論の末に決裂した。

●米ウ首脳会談決裂、国際社会に波紋
会談は、ウクライナの鉱物資源の権益に関する協定署名を目的としており、当初は和やかな雰囲気で始まった。しかし、ロシアのウクライナ侵略への対応や外交姿勢を巡り両者の意見が対立し、公開の場で批判の応酬が繰り広げられた。
予定されていた協定署名や共同記者会見は中止となり、異例の事態となった。トランプ氏はゼレンスキー氏を「戦いを好む」と批判し、一方のゼレンスキー氏は関係修復の可能性を示唆しつつも譲歩しない姿勢を見せた。
この衝突は、トランプ政権発足後初の両首脳の対面会談であり、ウクライナ戦争の停戦交渉を進める米国の仲介役としての立場に影を落とした。欧州諸国はゼレンスキー氏を支持する声明を相次いで発表し、米国との亀裂が国際社会に波紋を広げている。
●米国主導の国際秩序への挑戦
中国はこの会談の決裂を、複数の観点から自国に有利な状況と捉えている。
第一に、米国と欧州の分断が進行する可能性である。トランプ政権の孤立主義的な姿勢と、ゼレンスキー氏を支持する欧州諸国との対立は、西側陣営の結束を弱体化させる。
中国はこれを、米国主導の国際秩序に対する挑戦の好機と見なしている。特に、欧州が米国との関係を見直す中で、中国が経済的・外交的な影響力を拡大する余地が生じる。例えば、インフラ投資やエネルギー供給を通じた「一帯一路」構想の推進が、欧州諸国との関係強化に繋がる可能性がある。
●中国と欧州が接近する可能性も
第二に、欧州への接近が現実的な選択肢となる点である。米国がウクライナ支援から距離を置く姿勢を示せば、欧州は独自の安全保障政策を模索せざるを得ない。この状況で、中国は経済協力を軸に欧州とのパートナーシップを深め、米国の影響力を相対的に低下させる戦略を展開できる。特に、ドイツやフランスといった主要国との貿易関係強化は、中国にとって地政学的な利益をもたらすだろう。
●米ロ関係強化で中ロ関係改善促す
第三に、ロシアとの一層の関係強化が期待できる点である。米国とウクライナの対立は、ロシアにとって有利な状況を生み出す。トランプ氏がウクライナ支援に消極的な姿勢を示す中、ロシアは西側からの圧力が軽減されると予測される。中国はこれを利用し、エネルギーや経済分野でのロシアとの協力を拡大する可能性がある。中露間の経済的結びつきは既に強く、今回の決裂がさらなる連携を後押しする形で機能するかもしれない。
一方で、中国はこの会談の決裂に潜むリスクも認識している。第一に、ウクライナ戦争の終焉によってトランプ政権が対中国政策に集中してくる可能性である。
仮にトランプ氏がウクライナ問題から手を引き、戦争が停戦や終結に向かえば、米国の外交資源がアジア太平洋地域、とりわけ中国に向けられる可能性が高い。トランプ政権は過去にも対中強硬姿勢を明確にしており、貿易戦争や技術覇権争いを再燃させる可能性は高い。
第二に、中国がロシアとの関係を強化する一方、ロシア接近の姿勢を鮮明にするトランプ大統領が、プーチン大統領が中国との距離を置くよう要請するシナリオが考えられる。
トランプ氏は過去にロシアとの関係改善を試みており、ウクライナ戦争の終結も相まってロシアに中国との関係再考を促す可能性もあろう。現時点で可能性としては低いが、ロシアが中ロ関係よりも米国との取引を優先する選択を取れば、それによって中国は地政学的な孤立感を強めることになる。対米国でロシアを戦略的共闘パートナーと位置付ける中国にとって、これは看過できないシナリオだろう。
●米ウ決裂は中国に不確実性もたらす
トランプ・ゼレンスキー会談の決裂は、中国にとって利点とリスクの双方をもたらす複雑な状況である。米国と欧州の分断やロシアとの連携強化は、中国の国際的地位を高める機会を提供する。しかし、ウクライナ戦争の終焉による米国からの対中圧力の増大や、ロシアが米国に接近する可能性は、中国の戦略に不確実性をもたらす。現在の地政学的な変動は、中国にとって試練と機会が交錯する局面である。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)





