●土壇場での口論
アメリカのトランプ大統領はバイデン前大統領が行ったウクライナ支援が無駄だと判断。トランプ大統領はアメリカ国民の税金でウクライナ支援をしたことが無駄だと判断し、ウクライナのゼレンスキー大統領にウクライナの地下資源を要求していた。

ロシアがウクライナに侵攻したことで国際社会はロシアを悪の国と見なしたが、トランプ大統領はウクライナに戦争の原因があると見なしている。このためトランプ大統領はロシアのプーチン大統領を批判しなかった。
■米ウクライナ首脳会談で激しい応酬、ゼレンスキー氏は退出を命じられる 何が起きたのか
https://www.cnn.co.jp/usa/35229956.html
このためトランプ大統領が行うウクライナとロシアの仲裁はロシア有利になり始める。ゼレンスキー大統領は最初は拒否したがアメリカとの交渉を続け要求に応じることになった。これでウクライナ有利の仲裁になるかと思われたが、ホワイトハウス大統領執務室でゼレンスキー大統領とトランプ大統領が口論する最悪の事態が発生した。
●和平の手数料を拒んだことが原因か?
国際社会は強国の論理で動くのが現実。さらに時の強国が戦争の仲裁国になることは善意ではない。戦争当事国を見て強国に都合が良い国の味方になる。この時に強国が味方になった戦争当事国に和平の手数料を支払うのがマナー。
実例は日露戦争時のアメリカが日本に対して求めたハリマン構想が典型例。当時のアメリカがロシア帝国と日本の仲裁国に名乗り出た。当時の日本は国際社会のマナーを知らないのでアメリカの善意だと誤解した。アメリカはシベリア利権を狙っていたので、アメリカの実業家ハリマンを代理人として日本に南満州鉄道(満鉄)の共同経営を提案した。
当時の日本は国際社会のマナーを知らないので、ハリマンがアメリカの代理人だと思わなかった。これで日本からアメリカに支払う仲裁の手数料が失われる。これが原因でアメリカは日本を嫌うようになり始めた。
ゼレンスキー大統領が国際社会のマナーを知っていれば、トランプ大統領が要求したウクライナの地下資源を仲裁の手数料として飲んだはずだ。だがゼレンスキー大統領は知らないのでトランプ大統領は怒ってしまう。こうなるとトランプ大統領はゼレンスキー大統領の言動・立ち居振る舞いが気に入らない。このためホワイトハウス大統領執務室で外交カードもないのにアメリカに挑んだと誤解されたのだ。
■西側諸国が一斉にウクライナ支持を表明、米ウ首脳会談の決裂受け
https://www.cnn.co.jp/world/35229966.html
国際社会は軍隊を用いて先に開戦した国を悪の国と見なす。これは今の平和を否定する行為だから悪の国になる。実際に戦前の日本が軍隊を用いて先に開戦したから悪の国にされた。このため宣戦布告は飾りであり先に開戦することが悪なのだ。
この基準があるからロシアがウクライナに侵攻したことでロシアは悪の国と見なされた。これが原因でプーチン大統領は国際社会から批判されている。それなのにトランプ大統領は侵攻したプーチン大統領を批判しない。それどころかトランプ大統領はゼレンスキー大統領を嫌いプーチン大統領を評価することを続けている。
トランプ大統領がゼレンスキー大統領を嫌いロシアに傾倒していることは明らか。これを察知したNATO諸国は素早くウクライナ支持を表明した。NATO諸国から見るとウクライナはロシア軍の侵攻を阻止する防波堤であり緩衝地帯になる。軍事から見れば敵軍の侵攻を遠く離れた場所で迎撃することが基本。
このためウクライナがNATOに加盟すればロシアの膨張を止める防波堤になり、同時にウクライナが緩衝地帯となり西ヨーロッパ防衛が可能になる。さらにウクライナ軍がNATO規格の兵器を購入すると兵器の市場が拡大して旨味がある。だからNATO諸国はウクライナを重視し支援継続を行う。
●ウクライナの立場は日本の未来
日本からウクライナの立場を見ると他人事ではない。トランプ大統領がロシアに傾倒したことは日本の国防の危機になった。これまではロシア軍が日本に侵攻し北海道に上陸することは不可能と断言できた。だが今は違う。
基本からロシアが日本に侵攻するには、第1段階としてロシア空軍が航空自衛隊から制空権を奪い、第2段階としてロシア海軍が海上自衛隊から制海権を奪い、第3段階としてロシア軍を北海道に着上陸させることになる。この場合、兵士一人当たり一日で100キロの物資を必要とする。陸軍1個師団であれば2000トンの物資を必要とし、空軍が陸軍1個師団を火力支援するなら4000トンの物資を必要とする。
これを毎日ロシア東部軍管区から北海道に補給しなければならない。さらに地上戦力1個師団では北海道の占領は不可能だから10個師団は必要になる。こうなるとウクライナに侵攻したことで物資・戦力はないも同然。このため欧米がウクライナを支援したことは間接的な戦争であり仮想敵国ロシアを弱体化させることに成功した。このため今のロシア軍が日本の北海道に上陸することは不可能。だがトランプ大統領が、この前提をひっくり返すことをした。
トランプ大統領はロシアに傾倒したのでロシアが日本に侵攻しても黙認する可能性がある。仮にロシア海軍の揚陸艦2隻と民間船で北海道に上陸したら?
最初は2000人規模の地上戦力だとしても北海道の一部を占領できる。
この時トランプ大統領が“日本がロシアを挑発したから悪い、日本は即時に停戦しろ!”と言う可能性がある。こうなると基本的な軍事作戦を無視したロシア軍を自衛隊は迎撃できずに日本政府が戦闘停止を選ぶ可能性がある。
●日本の対応策
日本からウクライナを見ると、日本も核兵器を保有すべきとの声が多くなった。だが、これはトランプ大統領には悪手になる可能性があると同時に、プーチン大統領に日本侵攻の口実を作るリスクがある。さらに日本がNATOに加盟することもプーチン大統領に日本侵攻の口実にされるだろう。これらはトランプ大統領から見れば日本がロシアを挑発したから悪いと言われるだろう。実際にウクライナで実演されている。
・日本の選択肢1:日本の核兵器保有
・日本の選択肢2:日本がNATOに加盟する
・日本の選択肢3:イギリスと核兵器シェアリング
・日本の選択肢4:イギリス・フランスなどと軍事同盟を行う(NATOではない)
・日本の選択肢5:アメリカ製兵器からヨーロッパ製兵器に切り替える
選択肢として1と2はプーチン大統領に日本侵攻の口実にされると同時にトランプ大統領がロシア有利にするから実行不可能。このため核保有国であり親日国であるイギリスと核兵器シェアリングをすることがプーチン大統領への対抗策として有益。
何故なら日本は直接保有していないからだ。これだけでは日本の安全保障として不足だから、日本はイギリス・フランスと軍事同盟を行うことが好ましい。さらに日本がロシアと戦争になったらトランプ大統領はアメリカ製兵器を日本に売らない可能性がある。さらに今自衛隊が保有するアメリカ製兵器の使用禁止を言い出しかねない。これに備えて国産兵器の増加と、アメリカ製兵器からヨーロッパ製兵器への切り替えが必要だ。
●アメリカ依存を止める選択肢
日本の安全保障では今のトランプ大統領は危険。トランプ大統領は中国を異常に敵視しているから台湾・日本を守ることは間違いない。だがトランプ大統領はロシアに傾倒しているからロシアと日本の戦争になると北海道の分割か最悪の場合は北海道をロシアに渡すことすら日本に要求するだろう。
これはトランプ大統領が“平和のために日本が北海道を捨てれば解決する”と見た場合だ。今のゼレンスキー大統領とトランプ大統領の口論と状況を見ると避けられない現実になった。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)