【東風西風】『巨匠とマルガリータ』

ミハイル・ブルガーコフ(Wikipediaより)

ウクライナ出身の作家、ミハイル・ブルガーコフ(1891~1940)は、20世紀ロシア文学の巨匠として知られている。

キーウ(キエフ)で1906年から19年にかけて住んだ家は、89年国立キエフ歴史博物館の分館として開館し、ブルガーコフ文学記念博物館に。モスクワで暮らした家の建物は2004年、記念館「ブルガーコフの家」となり、その50号室は07年国立ブルガーコフ記念館として開館。同じ建物に二つの記念館が並立している。

『ミハイル・ブルガーコフ作品集』(文化科学高等研究院出版局)で紹介されている。1921年モスクワに出て執筆活動を始め、戯曲『トゥルビン家の日々』を上演して大成功を収めたが、その後、出版が禁じられる。

再評価はスターリンの死後で、死の直前に完成させて遺稿となった長編『巨匠とマルガリータ』は、66年に活字に。復活を遂げるのは80年代後半のペレストロイカとグラスノスチ以降だ。

30年の「ソヴィエト連邦政府への手紙」では、市民の間から、政府に悔悛(かいしゅん)の手紙を送って社会主義的な戯曲を書きなさいという助言があったことを伝え、「欺瞞に満ちた手紙を書いてソヴィエト連邦政府に良い顔を見せるようなことは私には到底できそうにありません」と返答しつつ処遇改善を求めた。

そのような事情の中で書かれたこの長編は幻想的な怪奇小説で、奇妙なドラマ展開に時代の様相が浮かび上がってくる。

(岳)