ウクライナ侵略、ASEANにも影

タイでロシア人観光客“難民化” 国連の非難決議に越とラオス棄権

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、東南アジア諸国連合(ASEAN)にも多大な影響を与えている。世界のメディアがウクライナ人難民を連日、報道する中、ここでは現地に足止めされたロシア人観光客の“難民化”が起きている。(池永達夫)

タイ国内に足止めされているロシア人とウクライナ人の観光客は、3月下旬時点で約8000人に上る。内訳はロシア人約7000人とウクライナ人約1000人。飛行機の欠航などでタイから帰国できず、観光地などでの滞在を余儀なくされている。

元来、南国のタイはロシア人のバカンス旅行で人気が高い。入国規制の緩和以降、タイのビーチリゾートを訪れる外国人観光客は右肩上がりを続けたが、ロシア人の存在感は群を抜いていた。今年1月には2万3000人、2月には1万7600人ほどがタイを訪問した。

だが今回ばかりは、ロシア人観光客は旅行難民的な境遇に陥っている状況がある。

何より欧米諸国の経済制裁で、大手のクレジットカードが使えなくなるなど、ホテル代などの清算が混乱しているだけでなく、通貨の下落でルーブルのレートが下がり、その分、いつもより割高だったりもする。寒い国を離れ南国リゾートに来たはずのロシア人観光客は、北風に懐も直撃された格好だ。

外国人観光客らでにぎあわうタイ南部ピーピー島のマヤ湾=2月5日(時事)

タイ観光の人気スポット・プーケットは、かつてプーチン大統領もひと泳ぎしたことのあるロシア人のリピーターが多い観光地だ。今回の足止めロシア人の約半数を占める3000人が、この島で支払いに困ったり、帰りたくても帰れないまま、ビーチに缶詰め状態の生活を強いられたりしている。

こうした状況に、タイ政府は特別にビザを30日間延長した。申請代金も無料だ。

なおゴールドを預貯金代わりに所有するタイでは、ウクライナ危機で世界的に金が高騰し、庶民が金の売買所に列をなして押し寄せる光景もあった。タイでは通常でも金の人気は高いが、「有事の金」がさらに拍車を掛けた格好だ。

またベトナム航空は週1便で運航してきたハノイ・モスクワ定期直行便の運航を、3月25日から一時停止している。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で約2年間、運航停止を余儀なくされてきたものの、ベトナム政府の規制緩和を受けて1月末以降に再開したばかりだった。ロシア人観光客に人気が高いベトナム南部のビーチリゾート・ニャチャンでも、プーケット同様の足止めロシア人観光客が見られる。

一方、ベトナムは旧共産圏だったウクライナとの関係も深く、ウクライナにいたベトナム人1400人が先月下旬までに隣国ルーマニアなどに避難し、ベトナム政府手配の特別便などで帰国を果たしている。

ベトナムの貿易も逆風を受け、税関統計によると2月の対ロシア輸出額は1億8000万米ドル(約216億円)余りと、前月比で44・5%も下落した。対ウクライナも、2月は1300万米ドル足らずと、60・3%の大幅下落だった。

なおベトナムは先月2日、国連総会のウクライナ侵攻に伴うロシア非難決議で「棄権」に回った。ベトナム戦争時、最大の支援国家だった旧ソ連のロシアとは近年、エネルギー分野や武器調達の面で協力関係にあるなど、関係は深い。

ただASEAN諸国10カ国で棄権したのは、ベトナムとラオスだけだった。その他の8カ国はロシア軍の無条件即時撤退を求めたロシア非難決議に賛同した。

中でも異色なのはミャンマーだ。

昨年2月のクーデター後、反発する市民の弾圧を続けるミャンマー国軍は、ロシア支持の姿勢を鮮明にしており、ロシアのウクライナ侵攻は「国の主権を維持するため正当化される」と主張した。

しかし、国連大使は民主派のチョーモートゥン氏が務めており、法の支配を力で破るロシア侵攻を自国の軍の横暴に重ね、ロシア非難決議に賛同した。

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