世界日報 Web版

提訴の「洗脳」実態なし


“拉致監禁”の連鎖(210)パート
「青春を返せ裁判」法廷証言から(10)
500

スティーブン・ハッサン氏(上)(同氏のウェブサイトから)と著書「マインド・コントロールの恐怖」(恒友出版刊)(下)

 原告代理人3人のうち主役だった郷路征記弁護士は、提訴当初からこの裁判を「統一協会の布教過程そのものの違法性を問う訴訟」(全国統一協会被害者家族の会編『自立への苦悩』2005年教文館刊)と位置づけ、その前後の事情について次のように書いている(裁判自体は02年に終結)。

 「この訴訟における原告らの当初の主張は、統一協会の布教方法は洗脳であるから違法であるというものでした。しかし、統一協会の布教方法の中に『物理的拘束』はありません。ですから、統一協会の布教方法を洗脳と評価することには無理がありました。にもかかわらず、そのような主張をしたのは、ほかに統一協会の布教方法を説明し得る考え方が全く見あたらなかったからです」

 にもかかわらず、提訴した原告の吉岡富子、内田美子さん(ともに仮名)の「請求の原因」には「被告・世界基督教統一神霊協会による洗脳教育を受けて、その組織に取り込まれていたところを平成○年○月○日に救出されたものである」と書いている(当連載(3)と(4)参照)。

 同書の記述は、原告側が「洗脳」という事実がまったくなかったことを承知していたのに、「布教方法を説明し得る考え方が全く見あたらなかったから」という理由で、請求の原因として「洗脳」という言葉を入れたということだ。

 この裁判戦術は不誠実であるし、そもそも「洗脳」についてまったく無知だったのだろう。そして、郷路弁護士は同書で「そのような状態であった統一協会への入信論に劇的な変化をもたらした」と続ける。

 それが「スティーブン・ハッサンの『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版)であり、また西田公昭氏の調査・研究とその諸論文でした。裁判の現場で統一協会と直接対決をしながら、裁判官を説得していた者にとって、それらは、まさしく事態を切り開いていく“宝剣”のような役割を果たしてくれた」というのだ。

 『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版)が出版されたのは、平成5(1993)年4月、また西田公昭氏の調査・研究とその諸論文が発表されたのは94年。裁判中途の93、94年ごろに「マインド・コントロール」理論を知り、それに飛びついたのだ。

 西田公昭氏は当時、日本脱カルト協会代表理事で、静岡県立大学助教授。「マインド・コントロールとは何か」(紀伊国屋書店 95年刊)の著書などがある。

 だが、マインド・コントロールについては、元信者から集めた情報を元に研究しており「入信過程におけるマインド・コントロールの効果を証明するためには、入信した人たちだけでなく、勧誘されても入信しなかった人も含めた被勧誘者全体を調査対象にする必要がある」という宗教学者・渡邊太氏による批判もあって、評価は定まっていない。

(「宗教の自由」取材班)