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見逃せない心理的圧迫


“拉致監禁”の連鎖(206)パート
「青春を返せ裁判」法廷証言から(6)
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さいたま市で行われた強制改宗反対のデモ=2010年12月3日

 棄教し統一教会を訴えた原告の1人で拉致監禁を認めた植松由美さん(仮名)と被告側代理人(弁護士)との間で、次のようなやりとりがあったことを前回記した。

代理人 (脱会を)するまでずうっと保護すると言われていたんでしょう。

植松 言葉では言われてなかった。

代理人 言われてなくても、そういう雰囲気でしょうね。

植松 はい。

 見逃すことのできないやりとりだ。

 強制改宗、強制棄教のための拉致監禁の行為は、かつて精神病院の病棟など建物自体が拘禁を可能とする構造の場所を使って行われていた。それが、治安当局の目をかわせなくなり、巷間、雑踏にまぎれたマンションの1室などで実行されるようになった経緯がある。

 監禁したマンションに、脱会屋や元信者などが送り込まれ、説得が続けられる。その時の心理的圧迫がいかほどのものかは、強制棄教の場を逃れてきた人たちが口々にするところだ。

 つまり、窓に鉄格子をはめたり、玄関の錠を下ろすのは、説得に当たって監禁被害者が逃げないよう、外部と物理的に遮断する必要からということもあるが、むしろ「脱会しないと、死ぬまでこのままの状態だぞ」という無言の脅しの効果を狙ってのことの方が大きい。

 被害者や棄教を迫られた者にとって、その心理的圧迫はこたえるという。

 一般的に、強制改宗で棄教した人たちは、それまで経験したことのない重圧の中で脱会していく。植松由美さんの内実を知ることはできないが、代理人とのやり取りからは、脱会屋などが進める強制改宗のパターンの中にあったことがうかがえる。

 監禁下に説得を受け強制棄教に遭った人たちの多くは、大きな心の傷を負うという。

 宗教学者のアイリン・バーカー女史は「強制改宗にあった人々には、心理的なダメージを与え、トラウマを残す。多くの場合、ディプログラマー(強制改宗のプロ)は『お前は洗脳されている』『お前は自分の力で抜け出せなかったから、こうする必要があった』と言う。その人がこの言葉を信じるなら、その人物が人生において二度も自分自身の決断によって重大な決定を下せなかったということを意味する。これは、人格の否定ということになり、本人にとってきわめて大きなダメージとなる」(サンデー世界日報=平成12年3月26日号)と分析している。

 「自身の決断によって重大な決定を下せなかった」という心的ダメージを繕うために訴訟を起こしたとすれば、大変に気の毒なことである。

(「宗教の自由」取材班)