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子宮頸がんワクチン 重篤副反応は自己免疫疾患の可能性


犠牲者に多数の関節痛、SLE

 子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPV=ワクチン)の重篤副反応の報告が集まる中、英文医学雑誌『ループス』(2012年2月号)が、同ワクチンに含まれている免疫増強剤(アジュバント)により、これが被接種者の免疫との間に自己免疫疾患を引き起こす可能性を指摘していることが判明。HPVワクチンは、4月からの定期接種化で、その副反応の検討および被害者救済の充実が定められており、今後、厚生労働省の副反応認定が焦点になってこよう。
(山本 彰)

複数の英文医学雑誌が指摘

厚労省の対応が焦点

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雑誌『ループス』の論文(左二つ)と『自己免疫ジャーナル』の論文

 同雑誌はまず、主にイスラエルの医学研究機関に携わる3人の医師が、論説「アジュバントによって引き起こされる自己免疫症候群(Autoimmune Syndrome induced by Adjuvants=ASIA)のスペクトラム」で、これまで人間のワクチンに加えられているアルミニウム・アジュバントのような物質は、危なくないと考えられてきたが、動物モデルや人間の研究から「いくつかのアジュバントは、自己免疫疾患を引き起こすことが判明した」と述べている。

 サウジアラビアの族長が、自己免疫疾患の一つ、全身性エリテマトーデス(SLE)が一旦治癒していたのに、12年後、インフルエンザワクチン接種で再発した点を紹介しながら、「こうしたグローバルな状況を考察すれば、表に出てきているのは氷山の一角」と解説。

 「医師や患者が勇気を持ってアジュバントに関係した病状を報告することで、実際の副反応率やASIAの広がりがより正確に推定」でき、「免疫関連の病気でのアジュバントの役割は無視できず、医学界はより安全なアジュバント製造を目指すべきだ」と提言する。これらの医師は英文雑誌『自己免疫ジャーナル』(エルセルビエ社)に、10年7月の段階で、ASIAの問題を検証する論文を発表している。

 同号の『ループス』では、サント・トマス大学(マニラ)のソルデヴィラ氏ら3人の研究者が、「SLEの原因はHPVワクチン接種か、それともウイルス感染か」との論文で、HPVワクチンを接種後に自己免疫疾患を発症した三つのケースを検証。

 17歳の少女がHPVワクチンを接種した2カ月後、関節痛、両下肢に掻痒性の発疹などSLE特有の症状が出たのをはじめ、58歳の女性がHPVワクチン接種後、症状がほぼ収まっていたSLEが再発し、集中治療を施したが死亡した例を記している。

 結論として「臨床医は接種後、自己免疫疾患の(発症する)可能性を知っておかなければいけない」とし、HPVワクチン接種が注意深く行われるよう強調する。

 「全国子宮頸癌ワクチン被害者連絡会」(事務局長、池田利恵日野市議)には、これまで約300の被害者の声が届き、中には多数の関節痛やSLEと診断されている被害者もいる。これまでワクチン接種は、被接種者が持つこうしたリスクにほとんど注意が払われずに行われてきたのが実情だ。

 厚生労働省のワクチン副反応検討会は3月11日、「サーバリックス」(グラクソスミスクライン社)の副反応例として急性散在性脳脊髄炎(ADEM)とギランバレー症候群(GBS)を追加することを決定した。

 厚生労働省の「サーバリックスの副反応報告状況」(平成21年12月から同24年12月31日)には、ADEMの症例が2件、GBSが6件上がっているが、SLEは5件だ。

 これまで、SLEが同検討会の副反応に認定されたことはないが、こうした問題に詳しい佐藤荘太郎・内科医は「厚労省に上がっている重篤副反応の多くが症状で記されているが、病名だとSLEといえるものが少なくない」と指摘している。

 

 自己免疫疾患 免疫系は、本来、特定の病原体や毒素など、非自己物質に反応するが、何らかの原因により、自己の正常な細胞や組織を抗原として認識する抗体(自己抗体)ができる。自己抗体によって起こる免疫反応により引き起こされる病気を自己免疫疾患といい、全身の臓器に異常が生じるSLE、全身の関節に炎症を起こす関節リウマチ、体の筋力に力が入らない重症筋無力症などがある。治療法が確立しておらず症例が少ないため、全国規模での研究が必要な「特定疾患」に厚生労働省が指定しているものも少なくない。

「子宮頸がんワクチン」を考える

自治医科大学附属さいたま医療センター教授 今野良氏に聞く

自己免疫疾患と接種との関係

 子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPV=ワクチン)の接種を推進している今野良自治医科大学附属さいたま医療センター教授(産婦人科)に、自己免疫疾患と接種との関係などについて聞いた。
(聞き手・山本 彰)

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今野良氏

 ――重篤副反応が出ているのに、なぜ子宮頸がんワクチンを推進するのか。

 「世界保健機関(WHO)はワクチンと検診で子宮頸がんを予防することを薦めています。現在、日本では毎日約10人の女性が死亡しています。日本人のがん患者が保有しているHPV16、18型の新しいデータでは20歳代だとほぼ90%で、30歳代だと80%弱です。単純な計算で解析しているわけではありませんが、1万人に1人の女性しか子宮頸がんにならないとしても、その人を救うために検診をやってきたし、これからワクチンもやろうということです」

 ――HPV16、18型の感染率に比べてワクチンによる重篤副反応率の方が高いといわれる。

 「副反応の多くは、血管迷走反射による失神で、子宮頸がんワクチンの成分によって起きるのではなく、思春期の女子にワクチン接種を告げることで起きる反応なのです」

 ――急性散在性脳脊髄炎とギランバレー症候群が、3月11日の副反応検討会でサーバリックスの副反応に加えられたが。

 「これはほとんどのワクチンで副反応として書かれています。打った後に発症すれば、関係ないというのが難しいので、関係あるかもしれないとして挙げているのです。しかし、一般の人からは、因果関係があるのだなと聞こえるわけです。全身性エリテマトーデス(SLE)を子宮頸がんワクチンの接種と因果関係があると単純に考えることはできません」

 ――がんの予防効果は本当に精査できるのか。

 「ワクチンを開発するには、A群はワクチンを打つ人、B群はワクチンを打たない人と分けて臨床試験をします。最低、1万人とか2万人の人にワクチンを打って、別の群にはワクチンの含まれていないものを打って、10年間以上見ていかなければいけません。しかし、そんな臨床試験は経済的にも、また、倫理的にも難しさがあってできないのです。従って、WHOは、前がん状態や上皮内がんは4年くらいで判断できるので、実際にがんになる直前のところまで臨床試験をしようと決めたのです。すでに、上皮内がんが予防できているというデータも出てきています。ここが予防できればその先のがんには進行しないというのが医学的常識です」

 ――定期接種化の対象は、小6から高1までで効果の持続が疑問だ。

 「若いうちの性交渉でHPVに感染するから子宮頸がんになるのではないのです。若くても大人になってからでも、接種後は効果が続くということです。サーバリックスの効果が今、9・4年となっている理由は、9・4年経ったところで集計したからで、毎年延びていくのです。そこから先、どれくらい有効かというのは、時間が経ってみないと分かりません。医学的なコンピューターシミュレーションによるデータでいうと20~30年以上は効くだろうと予想されています」

 ――被害者の中にはワクチンを打つごとに体調が悪化し、ワクチンのせいと思わず3回目も打ち、SLEと診断されたケースがあります。アジュバントとの関係ではないですか。

 「SLEのような自己免疫疾患は、この年頃に発生してくる疾患で、当然、接種と時期的に重なってきます。ワクチンを打っていなくてもだんだん悪くなったかもしれない、紛れ込みの症状です。因果関係がなくても、ワクチン後にSLEが悪くなることだってあるのです。それを全部ワクチンのせいにするのは無理があります」

 ――厚労省に挙がっている副反応報告には、SLEと書いていなくてもSLEと取れる症例もある。

 「それを僕は判断する立場にはありません。それは厚労省のワクチン副反応検討会ですることです。WHOは、必要なものは推奨するし、そうでないものを勧めているわけでは決してない。これは、集団の中でHPVを持っている人を減らすことで、集団としてがんを減らすという社会的防衛の考え方です。HPV16型、18型がどんどんと減っていって最後は根絶されればよい」

 ――もう少し、検診を勧めたらよいと思うが。

 「それは重要なことで、検診で7割防ぐことができます。さらに検診受診率を上げるべきです。子宮頸がんワクチンが定期接種化されたことにより、ワクチンの副反応検討や被害者救済も、以前よりも充実されました。私たちは、子宮頸がんを少し減らせばよいと考えているのではなく、検診と子宮頸がんのワクチンの両方を上手に使って、日本の女性が子宮頸がんで悩んだり死亡したりすることのないようにしたいのです」