世界日報 Web版

声かけ禁止の時代


 スーパーに立ち寄った時のこと。レジで支払い中、次のような店内放送が流れた。

 「3歳くらいの女の子を探しています。姿を見かけた方は、店員にお知らせください」

 レジそばのサービスカウンターを見ると、お母さんらしい女性が心配そうに立っていた。周囲を見渡したが、女の子の姿はない。変質者が連れ去ったわけではないだろうから、すぐに見つかると思い、支払いを済ませて店を出た。

 自宅に向かって3分ほど歩いただろうか。「お母さ~ん!」と叫ぶ女の子が歩道に立っていた。スーパーで探していた迷子に違いない、お母さんの元に連れて行ってあげようと思い、「お母さん、いないの?」と声をかけた。

 すると、40歳くらいの女性が駆け寄ってきて、女の子に「どうしたの?」と話かけた。「スーパーで迷子になった女の子みたいですね」と、筆者が説明するが、女性の顔が険しい。すかさず「私が連れて行きます」と、女の子をかばうようにして、スーパーに向かっていった。

 迷子が見つかってホッとした半面、女性の態度に違和感が残った。もしかして、私が女の子を連れ出したのかもしれないと疑ったのではないか。そう思うと、彼女の表情に合点がいった。

 こちらは親切心から、女の子に声をかけたのに、と気分が悪くなったところで、あいさつを禁止にしたマンションのことを思い出した。先月、神戸新聞に次のような投書が載った。

 住民総会で、小学生を持つ親から、子供に「知らない人からあいさつされたら逃げるように教えているので、マンション内ではあいさつしないように」してほしいとの提案があった。それに対して、年配の住民から、あいさつしても無視されて気分が悪いから「お互いやめよう」という意見が出て、結局、禁止になったというのだ。

 子供に声かけもできない時代になったのか。(森)