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教科書謝礼問題、採択の公正性揺るがすな


 小・中学校の教科書を発行する会社の約半数が検定中の教科書の内容を校長らに見せ、謝礼を渡していたことが判明した。

 検定規則や業界の自主ルールに違反する行為で、教科書採択の公正性を揺るがしかねない。

 教育長に歳暮・中元も

 昨年の三省堂の問題発覚を受け、文部科学省が小・中学校の教科書を発行する会社を対象に調査した結果によると、東京書籍など12社が教員ら計5147人に内容を閲覧させ、うち10社が謝礼を渡していた。

 最も多いのは東京書籍で、2009~14年度に小中の全教科で教員らにコピーを見せるなどし、計2245人に3000~3万円の現金や図書カードを配布していた。教育出版は1094人に3000~5000円、光村図書は463人に一律2万円の現金を支払った。

 検定中の教科書を教員に見せたのは、主には検定終了後の内容修正や教員用の指導書の編集などに役立てる狙いだったという。しかし、このような行為は文科省の教科用図書検定規則の実施細則では禁じられている。外部の介入を排して検定を適正に行うためだ。

 また、業界団体「教科書協会」の自主ルールでは、選定に関わる教員らへの金品の提供を禁止している。これも採択の公正性に疑念を招かないために当然だろう。

 だが今回の問題は、教科書採択をめぐる規則やルールが形骸化していたことを示したと言える。数研出版にいたっては、採択権限のある教育長や教育委員計10人に中元や歳暮を贈っていたという。これでは自社の教科書を採択してもらうためだと疑われても仕方がない。不正の常態化に唖然とさせられる。

 教員側の問題も大きい。各社が謝礼を渡したのは地域の有力教員で、調査員として教科書採択に関わるケースが多い。収賄罪にも問われかねず、生徒や児童に示しがつかない。

 三省堂のケースでは、同社が開いた会議に出席し、謝礼を支払っていた校長ら計53人のうち、16都府県の21人が採択に関与していた。この中の6人が関わった大阪市や岡山市など6地区では、中学の英語教科書が他社から三省堂に切り替わったことが分かっている。

 文科省は各教育委員会に教員らの名簿などを送付し、謝礼受け取りの有無や採択への関与を確かめて採択結果への影響を調べる。不正があった場合は、厳しく処分すべきだ。

 教科書会社についても、今後同じような行為があれば社名公表や当該教科書の検定中断などの罰則を検討する。実効性のある再発防止策を講じなければならない。

 問題の背景には、少子化による教科書市場の縮小がある。小中学校用の採択は原則4年に1回のため、営業が過熱した結果、他社に追随する形で不正が蔓延(まんえん)したものとみられる。

 内容で選ばれるべきだ

 魅力ある教科書作りのため、教科書会社が教員と情報交換することは理解できる。ただ、採択の公正性に疑念を持たれないよう、透明性を高める仕組みが欠かせまい。教科書は内容に基づいて選ばれるべきだ。

(1月28日付社説)