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PCばかり見る医師、検査で増える薬の処方


 15年ほど前から高血圧の薬を飲んでいる。何となく心臓が苦しくなって、診察を受けたクリニックで薬2種類を処方されたのだ。しばらくすると、血圧は正常値になったので、薬を1種類減らしてもらった。もう1種類は、飲まないと心臓の鼓動が早くなる感覚があったので飲み続けた。

 1年ほど前に受けた検査でコレステロールと何かの数値が高いと言われ、薬が新たに2種類増えた。その効果があってか、コレステロール関係の数値は正常値になったが、薬は飲み続けている。

 ところが、1カ月前、今度は血糖値を示す値が6・5になって「糖尿病」だと診断。薬を1種類増やすことになった。それまでは6・2~6・4で「境界型」だった。数値が0・1ポイント増えただけで「病気」だとして薬を処方する現代医学に疑問を感じつつも、親切な先生なので指示に従った。

 年齢を重ねるに従い、飲む薬の数が増えていることを体験し、5年前、84歳で他界した義母のことを思い出した。晩年、糖尿病やら認知症やらで、内科や精神科の医者にかかり、何種類もの薬を飲み続けたが、ある時、精神がおかしくなって雨の中、裸足(はだし)で近所を歩き回った。

 きっと薬の副作用に違いないと思い、それまでかかっていなかった高齢のお医者さんの所に相談に行ったら、すべての薬を見て、「これは要らない。これも要らない」と薬を減らしてくれた。そして、その先生はポツリと言った。「今の医者はコンピューターばかり見て患者を診ていない」。それ以降、義母は妙な行動を取ることはなくなった。

 厚生労働省は2年前、在宅療養する高齢者の6割以上が6種類以上の薬を処方されている実態を明らかにした。その1年前には、多剤服用による副作用の危険性を指摘、不要な薬の処方を減らすガイドラインを設定した。しかし、PCばかり見て、薬を処方する医師は減っていないようだ。

(森)