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年越し前の「幸先詣」が家族の絆を強める


 「密」になるのを避けるため、初詣の分散参拝が願われる中、年越し前に参拝を前倒しする「幸先詣(さいさきもうで)」を呼び掛けた湯島天神(東京都文京区)を、大みそかに参拝した。

 「学問の神様」として知られるだけに、多くの受験生や家族連れが訪れていた。出店のない境内には、合格祈願のお札やお守りを求めて長蛇の列ができていた。

 「密ではないか」と思わないでもなかったが、例年の初詣なら、もっと混み合うのだろう。自分の病気や傷と同じ場所を撫(な)でると治癒すると言い伝えられている「撫で牛」も、感染防止のため柵で囲われ、丑(うし)年なのに出番を封じられ寂しそう。

 それでも、牛の絵が描かれた開運の絵馬に志望校を書いて納める受験生とそれを見守る家族のまなざしはいつも通り真剣だ。中には、孫の大学合格を祈って「じーじ、ばーば」と記した絵馬もあった。

 お正月は家でのんびりする人が多いが、受験生はくつろぐどころか、不安と孤独感が増す時期である。彼らには、コロナ禍の今は例年にも増して心の支えが必要だろう。家族の絆の大切さを、改めて教えているように思えた。

 境内を出て、地下鉄の駅に向かっていると、私の前を高校受験を控えていると思われる男子生徒とその家族連れが寄り添うように歩いていた。その姿に「連雀(れんじゃく)」を連想した。

 行商人がたくさんの小物を入れて担ぐ箱を意味することもあるが、スズメ目レンジャク科の鳥の総称で、冬に群れて生活することに由来するという。東北で育った私は、雪降る中、電線の上で、無数のスズメが身を寄せ合い密をつくりジッとしている光景を思い出す。

 人もスズメとあまり変わらず、環境が厳しくなればなるほど、密にならないと生きていけない生き物だ。「3密」を避けることを叫ばれる今だが、せめて家族の心だけは密になって、受験生を励ましてほしい。

(森)