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テーマは“青春” 「和菓子甲子園」が10月に開催


石川県の女子高生が考案した「幸せの菓子『恋つゝみ』」に“栄冠”

 今年10月に開かれた「第11回全国和菓子甲子園」(主催・全国菓子工業組合連合会青年部、東京)で、石川県白山市の県立翠星(すいせい)高校の女子生徒が考案した幸せの菓子「恋つゝみ」が“栄冠”をつかんだ。地元産の食材で作った3種類の餡(あん)を羽二重餅で包んだ甘酸っぱい食感で、香りも爽やかだ。神前に奉納する巻物をイメージしている。地元の和菓子店や観光連盟では、「ご当地菓子」として大々的に売り出したいと期待を込めている。(日下一彦)


加賀棒茶の餡を羽二重餅に巻き、神前に奉納する恋文の巻物風に

 受賞した2人は食品科学コース3年生の巧(たくみ)ヒカリさんと2年生の小西愛実さん。担任の安川三和先生から応募を勧められ、6月から取り組んだ。途中、コロナ禍の影響で休校が続いたが、2人は構想を膨らませ、8月初めから本格的な制作に取り組んだ。

テーマは“青春” 「和菓子甲子園」が10月に開催

「第11回全国和菓子甲子園」で優勝した翠星高校の女子生徒が考案した乙女らしい夢を育んだ「恋つゝみ」(石川県立翠星高校食品科学コース提供)

 受賞作の「恋つゝみ」は縦6・5㌢、横4㌢、高さ3㌢で巻物風になっている。食材は地域活性化を目指して、県特産の「赤崎いちご」「金沢ゆず」「加賀棒茶」でそれぞれの餡を作り、それを羽二重餅で包んで、神前に奉納する巻物風に仕上げた。棒茶の餡は板状にして、その上にイチゴとユズの餡を寄り添うように載せてあり、羽二重を“パクッ”と口に含むと、それぞれ独特の酸味と風味が広がるように工夫されている。

 三つの餡にはそれぞれイメージを膨らませた。「いちご餡」は、ほんのりしたピンク色で、味は甘酸っぱく女性を、「ゆず餡」は黄色の柑橘(かんきつ)の香りで爽やかな風味で男性を、さらに加賀棒茶は茶色で香ばしく、恋文にしたためた文字をそれぞれイメージしている。形にも女子生徒らしい細やかな配慮がにじんでいる。餅を包む半紙の内側には、手書きの花々を描き、その花言葉を添えて、一品一品丁寧に“赤い糸”で結んだ。

 今年の和菓子甲子園のテーマは「青春」で、全国24校から61作品が寄せられた。2人は「青春の淡い片思い」をイメージして、想(おも)いを乗せて奉納する恋文の巻物をモチーフに創作菓子に挑戦した。

 学校のある白山市は、「しらやまさん」の愛称で親しまれている日本三名山の一つ霊峰白山の麓にあり、2人はお正月には毎年、家族で祭神を祀(まつ)る白山比咩(ひめ)神社へ初詣に出掛けている。同社は縁結びでも知られ、巻物を奉納する「恋文奉納」が若いカップルに人気だ。

テーマは“青春” 「和菓子甲子園」が10月に開催

「第11回全国和菓子甲子園」で優勝の栄冠をつかんだ翠星高校食品科学コース3年生の巧(たくみ)ヒカリさん(左)と2年生の小西愛実さん(石川県立翠星高校食品科学コース提供)

 制作に当たって、巧さんは主に羽二重を、小西さんは餡を担当。2人とも本格的な和菓子作りは初挑戦とあって、試行錯誤の繰り返しだったという。「羽二重餅の色や厚みを変えながら、適度の粘りを出して純白の厚さ5㍉に仕上げますが、それが上手(うま)くできず、投げ出したくなることもありました。特に大鍋に砂糖水を入れて餅を練り上げる作業は、体力勝負で腕が痛くなりました」(巧さん)。

 「餡は3種類とも火加減や練り具合が違います。いちご餡では食感を出すため、ジャムに切ったいちごの果肉を入れてつぶしながら練りますが、ジャムが焦げてうまくいかず、途中、心が折れて投げ出したくなることもありました」(小西さん)。苦心の連続だったが、お互いに支え合って完成につなげた。こうした涙ぐましい努力の結果、「恋つゝみ」は初めての応募にもかかわらず、いきなり全国優勝を果たした。

 「将来はウエディング関係に進みたい」という巧さんは、「これからも和菓子作りに取り組んでいきたい」と夢を膨らませ、小西さんは「来年、後輩と一緒に新たに和菓子作りに挑戦し、その良さを継承していきたい」と今から楽しみにしている。

 2人を指導した安川先生は、「今回の受賞で、和菓子甲子園が後輩たちの目標になります。これを契機に和菓子文化を根付かせたい」と語っている。地元の白山市観光連盟の中村直人専務理事は「神社近隣の和菓子店や道の駅で地元の人たちや観光客に販売したい」と期待を込めている。

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 全国和菓子甲子園 全国菓子工業組合連合会青年部が主催する高校生を対象とした和菓子のコンクールで、2人1組で競う。前身の「和菓子甲子園2010」から数えて今回で11回になる。今年は全国24校から61作品が寄せられた。本来は東京の会場で制作するが、今年はコロナ禍で、作品の郵送・創作工程の写真および動画で審査する方式に変更された。「恋つゝみ」は味と共にネーミング、企画力、見た目の美しさ、コンセプトなどで高く評価された。