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人里に進出する野生動物


 犬とサルと雉(きじ)。童話『桃太郎』に出てくる動物たちだ。犬を除けば、今は動物園でしか見掛けないが、昔はもっと人里近くでよく目にしたのだろう……。ところがどっこい、最近、そんな考えは一変した。

 先月、四国の故郷に帰省して、親戚や知人に話を聞くと、今は少し車で山奥に入るとサルや雉をよく見掛けるのだそうだ。もう半世紀以上も前となった筆者が子供の頃、サルや雉は近くの山で見掛けたことがなかったので、これは驚きだった。

 東京の区部でも“活動”するハクビシンはもとより、イノシシやタヌキも人里で見られるようになっており、少し山奥に入るとカモシカや熊まで目にすることがあるのだとか。

 山奥の老人だけの家では、イノシシやサルから果樹や畑の野菜を守るために柵を設けたりするが、すぐに盲点を突かれて食い荒らされてしまう。結局、自宅の庭などで細々と野菜を作るしかないところが多いという。

 なぜ多くの野生動物が人里近くに進出するようになったのか。現地の感覚として第一に挙がったのが、野犬がいなくなったことだ。狂犬病など人の被害を予防するために、行政が野犬を徹底して捕獲・処分しており、それが功を奏した半面、野生動物が安心して行動できるようになったことが大きいというわけだ。

 第二に挙がったのは、猟師が極端に少なくなったこと。もともと楽な仕事ではない上に、銃の規制で猟銃を持つのも規制が多く、若者に猟師の成り手がいない。現在は賞金目当てにイノシシやサルを獲(と)る人もいるが、罠(わな)を仕掛けるのが普通だという。

 そして第三に、山里の人口が減って人間が開墾した領域にまで野生動物が進出してきているのではないかということだ。

 AI(人工知能)等の普及で超スマート社会の到来が云々(うんぬん)される時代に、野生動物から生活を守る戦いを強いられる地域が広がっている。

(武)