今年もあとわずか。この季節になると、年始の風物詩、箱根駅伝の話題が少しずつ人々の口に上ってくる。その箱根駅伝の中でも難所の一つが「遊行寺(ゆぎょうじ)の坂」だ。この坂は神奈川県藤沢市にあり、湘南の観光地と信仰の島で知られる江の島の玄関口でもある。藤沢の歴史をひもとくと、この遊行寺と共に街が発展してきたことがわかる。遊行寺に足を運んだ。(佐野富成)

藤沢には新宿駅から小田急線で1時間ほどで着く。とにかく鉄道の便はいい。JRの東京駅からは東海道線があり、さらに今や観光鉄道として知名度が高い江ノ電(江ノ島電鉄)、さらに湘南モノレール(大船―湘南江の島)もある。江の島に行くにしても藤沢駅から片瀬江ノ島駅まで小田急線が延びている。

JRと江ノ電で観光都市の鎌倉にも行ける。ちなみに鎌倉や江の島へはバスの便もあり交通の要所として街は発展してきた。
そのため意外と同市が史跡に恵まれ、古い歴史を持つ街であることが見落とされがちで少々残念な気がする。
藤沢を語る上で欠かせないのが遊行寺(正式名称・藤澤山無量光院清浄光寺)だ。藤沢駅から徒歩15分ほどの所に同寺がある。現存する本堂のほか惣門、石垣及び築地塀、寺内にある宇賀神社、鐘楼など10棟が文化庁が制定する「登録有形文化財(建造物)」に指定されている。境内には、庭園造りの庭があり、憩いの場ともなっている。

遊行寺の坂の中ほどの所から寺へ向かう道がある。車2台がすれ違うことができる道を抜けると駐車場が見えてくる。左に目線を移すと広大な遊行寺の境内が広がっていた。そこに1本の大イチョウが立っていた。樹齢はどれくらいだろうか。太くて立派な幹が、これまでの遊行寺の歴史を物語っているようだった。
遊行寺の創建は、鎌倉時代。時宗の総本山として建てられた。目的は、踊り念仏で知られる一遍上人の教えを継ぐ寺としてこの地に根を下ろした。
遊行の名は、教えを広めるために諸国を巡った上人たちの姿に由来するとか。
それにしても境内が広過ぎて、駐車場があるとしても目の前に広がる光景は広大だ。
大イチョウの木の近くに、同寺の宝物殿の建物があり、同寺が所蔵する貴重な資料が展示されている。受付の女性に話を聞くと、かつては、背後の山も寺の物で、「広大過ぎて本当の広さは分からないですね」というほどの存在感を持った寺だという。
「坂が箱根駅伝で有名ですね」と聞くと「ええ、その時は大勢の人が来ますよ」と話していた。

江戸時代の1601(慶長6)年に藤沢は東海道五十三次の第6番目の宿場町として幕府から指定され設置した。東海道を参勤交代する際、殿様が宿泊する本陣に遊行寺は設定され実際に大名も宿泊した。
この藤沢宿は、遊行寺を軸とした門前町を中心に大鋸・大久保・坂戸の3町からなる宿場町を形成。多くの人々によってにぎわった。
ところで、藤沢の街の立地は独特だ。平坦な場所が少なく小さな盆地が点在しているかのようでとにかく坂が多い。そして藤沢駅から歩いて5分ほどの所に藤沢市役所があるのだが、幾つかの切通しのような場所を橋でつないでいる。その一方で海に向かうほど平坦になっている。こうした地形も歴史の遺構として楽しむことができる。
遊行寺のほかにも市内には、義経の首洗い井戸、木喰上人行場跡など。江の島方面では、江の島本体、江島神社など。江の島に行く前に、藤沢駅で一度下車し、藤沢市の礎を築いた遊行寺や街並みを散策してみるのもいい。





