「横浜三塔」とは、横浜のシンボルとなっている三つの建物で、神奈川県庁舎、横浜税関、横浜市開港記念館。順番に「キングの塔」「クイーンの塔」「ジャックの塔」の愛称を持つが、これは横浜港に入港した外国人船員たちが、トランプの絵札に見立てて名付けたものという。いずれも大正から昭和初期に建てられたレトロな趣のある建築。特に開港記念館は無料で中を見学でき見応えがある。(文と写真・藤野俊之)

三塔は、横浜市関内地区の半径100㍍圏内にある。みなとみらい線の日本大通り駅の地上に出るとすぐ隣が県庁で、交差点の向こう側には開港記念館の赤レンガ造りの時計塔が立っている。
開港50周年を記念して大正3(1914)年に着工され、大正6年に開館した。大正12年の関東大震災で一部が焼失したが、昭和2年と平成元年の復旧工事で創建当時に甦(よみがえ)り、国の重要文化財に指定されている。辰野金吾の設計による東京駅の建築と同様、辰野式フリークラシックの様式で花崗(こう)岩の白と赤レンガの対比が美しい。

建物は現在、横浜市の公会堂として使われており、コンサートやさまざまなイベントに使われている。中に入ると、ボランティアのガイドさんが1階の講堂に案内してくれた。風格のあるステージが正面にあり、最大定員は481名。2階に上がり目を引くのは、ホールのステンドグラスだ。開港当時の交通に関する様子を描いている。関東大震災で焼失するが、当初の資料を基に再現した。「年月を経て劣化や汚れが目立つようになったので、平成20年に長年の劣化や汚れを修復するため10カ月かけて修復し、輝きを取り戻しました」とボランティアガイドさん。階段踊り場には、黒船「ポーハタン号」が描いたステンドグラスもある。

ガイドさんが最後に面白いものがありますと、地下室への案内し、壁の一画を指した。「BARBERSHOP」と英語で描かれている。終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)に接収されていた時期、地下にあった理髪店の看板だという。
開港記念館を出て、港の方へと歩くと、右手に神奈川県庁舎の「キングの塔」が見える。県庁舎は昭和3(1928)年に完成。昭和初期に流行した洋風建築に日本風の屋根を載せた帝冠様式の建物で、ビルの上に五重塔が載っている感じだ。
少し行くと今度は、天辺にイスラム風のドームを載せた建物が見えてきた。横浜税関「クイーンの塔」だ。昭和9(1934)年に建てられ、当時、横浜港で一番高い51㍍だった。ベージュサンドタイルを用いた落ち着いた色合いの外壁の上には波型の棟飾りが縁取っている。

ギリシャやローマの建築などに見られるパルメット文様が付されている。こういったユニークな建物のデザインの由来は、創建当時の資料が少なく不明と言う。中には資料展示室があり、税関業務についての資料が展示されている。

横浜税関まで来れば、右手(西側)に大さん橋、左手(東側)に横浜赤レンガ倉庫が目の前だ。ちなみに三塔を同時に見ることのできるスポットは、赤レンガ倉庫近くの赤レンガパーク、日本大通り、大さん橋国際客船ターミナルの3カ所。この三つのスポットを1日で巡ると願い事が叶(かな)うという。






