自由民権運動発祥の地
東北の民権活動家・河野広中
福島県のほぼ中央部に位置し、桜と歴史文化の城下町、三春。桜咲く季節には国指定天然記念物「三春滝桜」を一目見ようと海外からも観光客が訪れ、町は一気に華やかなムードに包まれる。じっと春を待つ城下町を訪れた。(長野康彦)

三春町は、梅・桃・桜の花が一度に咲き、三つの春が同時に来ることからその名がついたとされる。推定樹齢1000年を超える紅枝垂れ桜の滝桜は町の中心部から約5㌔の所にあり、今や三春町の一大観光名所となっている。

観光案内所「三春きたまち蔵」に車を止め、おすすめコースを訪ねる。滝桜は「今年の見頃は4月10日ごろではないかと思います」とのこと。花にはまだ早いので、まずは町のシンボルとも言える三春城跡を散策することにした。
三春小学校前の明徳門前から脇道を上っていく。この門は18世紀後半に三春藩7代藩主秋田倩季(よしすえ)により設けられた藩講所の表門で、同地に移設され小学校の校門として使われている。麓から100㍍ほどの小山を上っていけば三春城跡で、頂上からは町が一望できる。
三春城は1504年、田村義顕が築城したと伝えられ、さまざまな城主を経た後、秋田氏の時代に幕末を迎え廃城となる。建造物や石垣のほとんどを失ったが、町ではVRで三春城をよみがえらせる取り組みがなされていて、スマートフォンで二次元コードを読み取り特設サイトにアクセスすることで、VRで再現された三春城と城下町を見て楽しむことができる。

城山を下りて町を歩くと空き家となった古い洋風建築と出合った。窓からは何か器具が見えている。文字が消えかけた玄関の看板を見ると、病院として使われていた建物のようだ。白壁木造2階建て、シンメトリーな構成が印象深い。
三春は自由民権運動発祥の地でもある。
三春藩士・河野広中は、明治維新後は東北地方の自由民権運動の先駆者として活躍、「西の板垣、東の河野」と言われるようになった。三春庁舎裏の自由民権ひろばに河野広中の像が立っていた。

昼食には三春の味「油揚ほうろく焼」を食した。3代藩主秋田輝季(てるすえ)公が鷹狩りの際に食べた油揚げの逸話をもとに生まれた名物料理で、刻みネギを詰めた厚い油揚げを焼いて季節の味噌(みそ)とともに味わう。カリッとした表面と柔らかな中身が刻みネギと相まっておいしかった。

車を止めた観光案内所への帰り道、三春町文化伝承館に寄った。明治時代の豪商・旧吉田邸を改修して無料公開しているもので、母屋は釘(くぎ)を一切使わずに造られた数寄屋造りの2階建て。高級材をふんだんに用いた内部は見応えたっぷりで、床の間には日本三大床柱の材料が三つとも使われている。
伝承館の八代喜久治さんは、「紫檀(したん)、黒檀、鉄刀木(たがやさん)と三つ揃(そろ)っている家はおそらくないでしょう」と説明してくれた。
JR磐越東線三春駅から町の中心部へは徒歩20分と距離があるため、バス利用が便利。桜の時期は臨時バス「滝桜号」が運行している。






