トリオアラカルト
政治評論家 田村 重信さん
詩吟・舞踊家 恵 聖さん
声 楽 家 田中 利幸さん
政治と詩吟とクラシック。全くジャンルの異なる3人のエンターテイナーが埼玉県行田(ぎょうだ)市に集結した。政治評論家の田村重信さん、詩吟・舞踊アーティストの恵聖(けいせい)さん、声楽家の田中利幸さんが結成した夢の異色ユニット「トリオアラカルト」が10日、田中さんの地元である行田市の長光寺「石之蔵 空華(くうげ)」で旗揚げ公演を開催し、大勢の市民が集まった。 (文と写真・賀好 広)
ユニット名がユニークだ。「われわれの『アラカルト』とは、超一流のレストランで、最上級の料理をチョイスし頂くことです!」とイタリア料理研究家でもある田中さんならではの説明があり、「士気がぐっと上がってしまいましたが、一流の料理を楽しんでいただけるよう頑張ります」と恵聖さんが意気込みを見せた。

第1部のトップバッターを飾ったのは田中さんだ。妻の淳子さんのピアノ伴奏に伴い、マイクを使わずに圧巻の声量で「サンタルチア」「カタリカタリ」「帰れソレントへ」の3曲を披露。場内に「ブラボー!」の掛け声が飛び交った。
2番手に登場したのは恵聖さん。1曲目「月の砂漠」は、間に詩吟が入るという趣向を凝らしたもので、次の「静夜思(せいやし)」でも名調子を聴かせた。さらに、詩吟はマイナーな節回しで歌うが、メジャーな音階の詩吟があることを紹介。3曲目の「春暁(しゅんぎょう)」では、あの有名な漢詩「春眠暁を覚えず」のフレーズを明るい曲調に乗せて歌い、聴く人を驚かせた。
いよいよ3番手は〝歌う政治評論家〟田村さんの登場だ。「僕が大好きな政治家は平沢勝栄さん。平沢さんは大学生の頃、小学生だった安倍晋三元首相の家庭教師でした。選挙区の東京都葛飾区に銅像を造り、頭をなでると頭が良くなるというのを葛飾の名物にしたいです」と夢を語った。葛飾区のコミュニティーFM局の番組にも出演中の田村さん。その番組パーソナリティーを務める演歌歌手の武美怜(たけみれい)さんも応援に駆け付け、「平沢さんをネタにした『勝(かっ)ちゃん音頭』を私が作曲しました。歌うのは田村先生です!」と発表し、拍手が沸いた。ステージではオリジナル曲「天に向かって!」と「乾杯」で自慢の喉を披露。3曲目に歌った「マイウェイ」は、フランク・シナトラや布施明の歌で有名だが、今回はあえて岩谷時子訳詞、尾崎紀世彦のカバーを熱唱。政治評論家でありながら歌のうまさも存分に見せ付けた。

続く第2部では、まず田村さんがオリジナル曲「日本を美しく!」、続いて「乾杯」「マイウェイ」を再び披露した。
次に恵聖さんが「花」「黒田節」を歌い、最後に詩吟「川中島」を「ミッションインポッシブル」の軽快なサウンドに乗せて歌う変わり種を披露。扇子を片手に日本舞踊の振り付けも鮮やかに決め、観客を魅了した。

公演もいよいよたけなわ。トリを務めたのは田中さんだ。1曲目は、第2次世界大戦後のモンゴル抑留者が過酷の日々の中で歌い、昨年の戦後80年に田中さん自ら譜面に起こし発表した「囚(とら)われの旅人」を歌唱した。
「人々が理解し合い、助け合い、殺し合いなどしてはならないというのが神様の人類に対する宿題であるならば、人類はまだまだそこには至っていない」と語り、2曲目に谷村新司の「群青」を切々と歌い上げた。また前奏と間奏の部分では淳子さんの壮大なピアノ伴奏がひときわ光った。
田中さんはひと月前に弟さんを亡くしたという。66歳の若さだった。「ある時、家の電気がついたり消えたりしたことがあり、ここに弟がいるよ、と教えてくれた。人は死なないんだ。人には永遠の命があるんだ。ただ肉体の命は短いから、人を憎んだりしていては人生もったいないよ」と語り、3曲目「千の風になって」を朗々と歌い上げ、プログラムのラストを飾った。高齢の女性がハンカチで目頭を拭う姿も見られた。
「ジャンルが違うってすごいね。すごいメンバーに巡り会えました。ラーメンもすしもステーキもみんなすごい! 世界にも類を見ないぜいたくなアラカルトのコンサートが実現できました」と田中さん。最後は参加者全員が起立して「故郷(ふるさと)」を歌い、夢のような旗揚げ公演は幕を下ろした。





