東日本大震災から11日で15年という節目を迎えた。全国各地で関連の追悼行事などが行われる一方、映画の世界でも震災をテーマにした幾つかの作品が公開される。その中から「家族」をテーマにした3作品を紹介する。(佐野富成)
○日本・フィリピン合作映画『この場所』

異母姉妹の心と絆の再生物語
東日本大震災から十数年がたち、岩手・陸前高田の街もゆっくりとはいえ復興の一途をたどっていた。それでも、住民たちの傷が癒えるにはまだまだ時間が必要だった。
美大に通う20歳の橋本レイナもその一人だった。そんな中、最愛の父が突然亡くなる。
ある日レイナの元に、フィリピンから一人の来訪者が姿を現す。彼女の名はエラ。長らく音信不通が続いていたレイナの7歳上の異母姉だった。そんなエラが父の死後に突然現れることにその真意が分からず戸惑うレイナ。
文化も人種も違う姉妹はぶつかり合う。エラは、姉妹共通の父親がレイナの家族を選んだことに傷ついていた。レイナは、エラを父の遺産目当てにやって来たとなじる。
衝突と理解を繰り返し、互いの心の傷と向き合いながら家族や祖国への思いを見詰め直していく姉妹の成長の物語。
監督は、震災前からビジュアルアーティストとして東北各地で交流を続けてきたフィリピン人のハイメ・パセナ2世。今作が初の長編監督作品で脚本も手掛けた。やや冒頭部分に粗さがあるが、姉エラ役のギャビー・パディラと妹レイナ役の中野有紗が、文化も人種も異なる複雑な異母姉妹役をうまく演じている。
陸前高田市を舞台に未曽有の災害となった震災や復興、地域とのつながりなどさまざまな要素を盛り込みながら、重厚なヒューマン作品に仕上がっている。
中野は、フィリピンで最も権威がある第48回ガワッド・ウリアン賞で、外国人俳優として初の最優秀女優賞を獲得した。
全国順次公開中。(敬称略)
○ドキュメンタリー映画『三角屋の交差点で』

震災から7年、ある家族の葛藤
2011年の東日本大震災と福島第1原発事故から7年の年月が流れた。住み慣れた福島県浪江町(なみえまち)からの避難を余儀なくされた一家は、故郷に戻るか、新たな生活を選ぶかの狭間(はざま)で揺れていた。長年暮らした家と印刷業を手放し、いわき市の災害公営住宅で暮らす99歳の母とその息子夫婦の3年間を記録したドキュメンタリー。
故郷・大熊町への思いを離さない99歳の母・テツ、その母を敬いながらも介護の多くを妻に委ねる息子・タケマサと、家族の中で当然とされてきた役割を担い続ける妻・シゲコ。シゲコは被災してから長引く生活に、自身の生き方と向き合い始める。
注目すべきは、震災から7年たった18年から21年までの約3年間にわたり家族に密着し、ありのままの姿を撮り続けたこと。少子高齢化が叫ばれる昨今、高齢家族が抱える介護、母親の行き先、夫、妻の立場など時間がたてばたつほど深刻なものに。結局、震災や原発事故自体よりも、生活の面での問題の方が重くのしかかってくる。高齢者家族は暮らし続けていけるのか。
被災者家族は全部が全部、映画で登場するような家族ではないにしても、何かしら問題を家族内部に抱えていることは間違いないだろう。未曽有の震災から15年。あの記憶が少しずつ遠ざかっていく今、被災したある家族の現状を改めて浮き彫りにする。
監督は2011年以降、福島県を拠点に映像製作を続けてきた山田徹。4月4日より東京・ポレポレ東中野、福島ほか全国で順次公開。(敬称略)
○前川泰之主演の映画『宣誓』

被災者と支援者の交流描く
先月この欄で紹介した俳優・前川泰之主演の映画『宣誓』。先に挙げた2作品とは違い、震災当時、支援・救援活動を行った自衛隊側の視点から描く一作。
東日本大震災で、家族を失った自衛隊員・春日三尉(前川泰之)はそれを隠して任務に就いていた。そんな彼が被災地の避難所で、同じく家族を失った少年・吉村和樹と出会う。和樹は自衛隊の活動を静かに見詰めながら自分も人々を助けたいと思うようになる。
絶望の底で出会った二人は、言葉を交わすことで徐々に希望を信じて前へ一歩、歩み始めるのだった。
自衛隊が当時経験した話を幾つか紡ぎながら物語が展開される。
春日を陰ながら支える女性自衛官・佐藤を竹島由夏、そのほか黄川田雅哉、水橋研二、伊藤つかさ、羽場裕一、徳重聡、大地康雄ら名バイプレーヤーが顔をそろえた。監督は映画『陽が落ちる』などを手掛けた柿崎ゆうじ。
3月6日より全国公開中。(敬称略)






