
今年の夏は、地球温暖化を要因とする集中豪雨などの大規模な災害が頻発した。
とりわけ降雨が豪雨となる極端化傾向が著しかった。天気予報に必ず表示される危険レベル5(黒色)と危険レベル4(赤色)のハザードマップには黒と赤の線の表示だけで埋め尽くされていたと言えば大袈裟(おおげさ)だろうか。よく見るとこうした河川にもそれなりの名称が付いている。かつて人々がこれらの河川で暮らしていた証しであろう。
わが国にはこうした見える河川と同じくらい多くの「見えない川」があるのだ。かつて水が流れていたが、ふたをされたり埋められたりして、地表から姿を消した河川や水路のことを指す。
現在、このような「見えない川」は「暗渠(あんきょ)」と呼ばれている。
ちなみに、暗渠の反対語は「開渠」または「明渠」であり、これは水面が目視できる状態の水路を指している。
暗渠は、今日われわれが利用している道路、遊歩道、緑地、公園、あるいは住宅地の一部となっている場合が多く、その痕跡が意外なほどはっきり残されている。従って、暗渠は当時のその地域の地形、まちの成り立ち、人々の日常生活、水の役割などを伝えてくれる格好のインフラということになる。
地下に水脈を移す、つまり暗渠化する際には、単にふたをするだけでなく、ヒューム管(鉄筋コンクリート製の土管)やボックスカルバート(コンクリートでできた箱型の構造物)などを使用する場合がある。
今日、暗渠を探す大きなヒントとなるものを「暗渠サイン」と呼んでいる。これは暗渠と強い関わりのある物件を指す。まず「ほぼ確実サイン」となるのは、「橋跡」「水門」「水車」「護岸」などである。次に「そうかもサイン」としては、「家並み(裏向き・段差)」「下水道設備」「車止め」「弁財天」などである。
本書は、まさに暗渠ハンターである2人の著者が、日本列島をくまなく探査し、暗渠の多様性を詳(つまび)らかにした、わが国初の「暗渠全国網羅書」である。防災の一助にもなろう。
同書を読んでいたら、かつて全国的に流行(はや)った「路上観察」を思い出した。
阿久根利具







