トップ文化書評『刻印』ディラン 大月著 解散と似た経緯、米国での脱税裁判 【書評】

『刻印』ディラン 大月著 解散と似た経緯、米国での脱税裁判 【書評】

グッドタイム出版 定価1870円
グッドタイム出版 定価1870円

 今年6月、最高裁で解散命令が確定した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。本書は、その創設者文鮮明師の、米国での40年前の脱税裁判を検証した『異端審問』(1991年、米国)の解説書である。

 ニューヨークの銀行に文師名義で開いた口座での入金の一部が個人所得と見なされ、その脱税容疑が告発された。

 最終的に1984年、米最高裁は上告を棄却して有罪が確定、文師と当時側近だった神山威(たける)氏は禁錮刑と罰金刑を言い渡された。2人はコネチカット州ダンベリーの連邦刑務所に収監され、統一教会員には「ダンベリー」の名で記憶されている。旧統一教会への解散命令が出た今だからこそ、一読の価値がある。

 『異端審問』の著者カール・シャーウッドはピューリッツァー賞受賞経験のあるジャーナリストでもある。統一教会系の日刊紙ワシントン・タイムズ社に、教会の資金の流れを内部から調べるために入社し、その結果、全く違法性はなかったと判断し、裁判の公正さに疑問を持つようになったという。

 1985年に日本で出版された那須聖(きよし)氏著『牢獄(ろうごく)の救世主』も同裁判を扱い、指摘している問題点は同じ。政治的思惑、世論迎合、裁判手続きの無視などが挙げられる。

 始まりは、2人の議員が選挙目当てで、評判の悪い統一教会を告発したことである。国民の75%が同教会に批判的な状況下での陪審員裁判が、公正であったとは言い難い。

 著者は言う。「シャーウッドが本書を書いたのは、統一教会を擁護するためではなかった。彼が守ろうとしたのは、一つの原則だ――証拠なき迫害は誰の身にも起こり得る」。これは日本での裁判にも当てはまる。

 ただ、那須氏の著書では、判決後、著名な宗教家や多くの教団が宗派・教派を超えて裁判の不当性を訴え、文師への支援を表明したことで、逆に統一教会の存在感が増したと記述されている。

 日本でその動きがわずかしかないのは、なぜだろう?

 宗教が政治に左右されるのは、ローマ帝国によるキリスト教公認以来、変わらない。

 宗教にも政治的感度が必要なのだろうか。

多田則明

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