
幸福学(ウェルビーイング)研究の第一人者が、孤独と幸福との関係を分析し、対処法を指南している。自分が不幸だと感じるのは孤独感からで、孤独なのに幸せそうな人は結構いる。それが幸せな孤独で、その要素は①うけいれる(自己受容)②ほめる(自尊心)③らくになる(楽観性)。調査によると、幸せそうな高齢者には、これらの要素が共通していたという。
78歳の評者は30代の頃から、本当の人生は60からだと思っていた。子供の養育や仕事などの義務から解放され、好きなことに打ち込めるからだ。それを実感したのは70代になってからで、林真理子氏も70代が最高だと言っている。
老人学ではこれを老年的超越というらしい。マズローの欲求の5段階説によれば、自己実現の次の段階で、利他的な生き方に転換し、自分の人生の物語を再編集する時期である。人生100年時代の今だと、90代がそれに当たるかもしれない。不思議なのは死の恐怖が消えることで、多くの高齢者が、自然から生まれたのだから、自然に返るだけと達観している。仏教的に言えば悟りを開いた涅槃(ねはん)の境地。信仰を持たない人もそうなるので、宗教をも超えるのだろう。
不幸の原因の多くは対人関係に起因するので、むしろ孤独な方が幸せになりやすい。そもそも人は個性が違い、人生も異なるので、自分を本当に理解できるのは自分しかいない。紆余(うよ)曲折した人生も肯定的に受容し、悔いを消していくのが肝心なのだろう。その上で、できれば幸せそうな人と適度な接点を増やしていく。
著者の提案は、一日の幸福度を◎、〇、△などで記録すること。やってみると、良いことしか思い出せないので、なるほどと思う。
多田則明






