トップ文化書評『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』 中野 信子著 理にかなった利他、行動、祈り

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』 中野 信子著 理にかなった利他、行動、祈り

サンマーク出版 定価1650円
サンマーク出版 定価1650円

 「運がいいとか 悪いとか 人は時々口にするけど……」さだまさし氏が作ったグレープの楽曲『無縁坂』の一節だ。人生山あり、谷あり、一生を考えた時、良いこと、悪いこと、相半ばするが、人それぞれの捉え方によって「良い人生だった」と感じるか「悪い人生だった」と思うかに分かれてしまう。 

 著者は、この漠然とした「運」というものを積み重ねてきた脳科学や心理学の学び・視点から解き明かし、どうすれば、より良い人生を送れるのかについて語っている。運はだれにでも公平に天より降ってくるもので、それを捕まえるか、見送るかで結論が変わってくる。ただの偶然ではなく、思考や行動のパターンを変えることで自ら運を引き寄せることができるものだと科学的に解説している。 

 本書の主なポイント「自分は運がいい」と思い込むことで、事象に対する捉え方や対処法が変わり、結果として行動がポジティブな方向へ向かう。適度なストレスを力に変える平穏無事な状態よりも、適度にストレスがかかっている状態の方が脳のパフォーマンスは高まる。利他行動と他者との共存。自分だけの利益を追わず、他者を思いやり協力できる人が、長期的に見て生存競争やチャンスを掴(つか)みやすい。

 また、特定の宗教における神様に対して、というものでなくても、ご先祖様、お天道(てんと)様、道端のお地蔵様などに、そっと手を合わせ願いが叶(かな)うように、運が良くなりますように、と祈りの心を持つことが重要だと語っている。こうした行動を続けているとセロトニン、オキシトシン、ドーパミン、エンドルフィンといった脳内物質の分泌を促してくれるという。

 自分を中心とした行動、祈りは広がりがない。利他、行動、祈り、という行為はホルモンの分泌を促し、他人からの応援が得られる。「情けは人の為ならず」ではないが、巡り巡って利が舞い込んでくる。科学的根拠に基づいた説得力ある一冊。

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