トップ文化書評「『100万回生きたねこ』のナゾを解く」宮崎 哲弥著 死生観を深めるための絵本

「『100万回生きたねこ』のナゾを解く」宮崎 哲弥著 死生観を深めるための絵本

筑摩書房 定価1760円
筑摩書房 定価1760円

 佐野洋子の『100万回生きたねこ』は、100万回死に、100万回生き返る「とらねこ」が主人公の絵本で、1977年の刊行以来、250万部を優に超えるロングセラー。海外でも広く知られ、特に中国では280万部も売れているという。著者はその理由を、「中国の都市部において、『自分は自分のもの』という意識が浸透しはじめた」からと推測している。

 王や船乗り、サーカスの手品士、どろぼう、ひとりぼっちの老婆、小さな女の子などに飼われ、死ぬたびに泣かれたのだが、猫は死ぬのは平気で、少しも悲しくなかった。それは、自分の人(猫)生ではなかったから。何度も生まれ変わるのは仏教の輪廻(りんね)転生を思わせるが、佐野は仏教を信じていたわけではない。ちなみに仏教では、輪廻転生から脱却するのが悟りとされる。

 誰にも飼われない野良猫になった猫は、メス猫たちが擦り寄ってくるのに気を良くしていたが、自慢話にも反応しない白いメス猫が気になり始める。やがて、白猫のそばにいたいと思うようになった猫を白猫も受け入れ、一緒に暮らすようになる。そして、たくさんの子猫が生まれると、猫は自分よりも白猫や子猫たちが好きになった。

 ところが、白猫は年老い、ついに死んでしまう。猫は生まれて初めて人(猫)のために泣き、やがて白猫の隣で静かに死んでいくが、生き返ることはなかった。真の死を迎えたのである。

 著者は、怖い死なのに、多くの読者がハッピーエンドに感じるのだが、真の愛を知ったから、真の死を得たのではない、と言う。葛藤を抱えながら母を亡くした佐野氏は、そんな単純な死生観は持たず、むしろ読者自身に考えさせたかったのだ、と。

 真の愛を知れば、永遠に生きたいと思い、死が怖くなる。自分が主人公になった人生の最期を、どう受け入れたらいいのか。高齢社会のテーマだから、大人に読まれるのだろう。

 多田則明

 (筑摩書房 定価1760円)

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