
先の大戦末期、硫黄島での戦いは熾烈(しれつ)を極めた。その戦闘のさなか、日本軍将校によりアメリカ大統領宛てに書かれた手紙に関しての経緯をまとめている。
硫黄島の戦いにおける、守備隊長の栗林忠道陸軍中将が残した手紙については、クリント・イーストウッド監督によって映画化され、有名だ。一方で、敵国・米国に宛てられた手紙の存在はほとんど知られていなかった。
硫黄島に籠(こも)って戦った海軍のトップ市丸利之助少将が書き記し、日系2世の三上弘文兵曹が英語に訳した。
「ルーズベルトに与ふる書」と題する手紙は村上治重参謀の腹に巻き、米軍に届けられた。
日本を開戦に追い詰めたルーズベルト大統領に命を懸けて宛てた手紙だ。
市丸少将は激戦の中、太陽の光も届かず硫黄の臭いが充満する高温の地下壕(ごう)で書簡を書いた。
「百年後の日本民族のために殉ずることを切望する」という部下への言葉が胸に突き刺さる。
手紙の意図は、日本の立場、大東亜共栄圏の意味、天皇陛下の平和を願う思い、西洋諸国による人種差別、スターリン率いるソ連との協調の危うさなど、あらゆる角度からルーズベルト大統領の目を開かせようとするものだった。
本書は、著者が手紙の当事者3人のゆかりの地を訪れ、丹念に取材したものだ。硫黄島での詳細は、戦後、市丸少将と行動を共にしていた松本巌上等兵曹によって家族に伝えられたため、記録に残っている。
「戦争とは片方だけが悪くて起こるものではない」
戦争に負け米占領下に置かれた影響で、戦後80年間、「日本だけが一方的に悪い」という自虐に陥ってしまっていることに気付かされる。
豊田 剛
産経新聞出版 定価1870円





