
毎年、山梨県の人口に当たる80万~90万人が減少し、地域消滅が現実となった時代に、注目されているのが「観光以上、定住未満」の関係人口である。島根県の過疎の地域に生まれ、地方記者を経て大学の研究者になった著者の定義は「特定の地域に継続的に関心を持ち、関与するよそ者」。その観点から、各地の代表的な取り組みを幅広く紹介し、課題と展望を述べている。キーは人や地域との「つながり」で、背景には世代を超えた「孤立」の拡大がある。
人口2200人の島根県海士(あま)町は、唯一の高校の魅力を高めて島留学を呼び掛け、2004年から21年までの18年間で873人、622世帯の移住を達成したが、島に残る高校生が大幅に増えたわけではなく、後継者不足という構造的問題は残されたままだという。そうなる原因は、卒業後のつながりの希薄化、Uターンへのハードルの高さ、情報の少なさにある。そこで町役場では、卒業生や各地の若者とつながりを続け、人が育つ島づくりを目指すことに。
町は「大人の島留学」制度を作り、3カ月~1年の就労型お試し移住を進めている。始めてから3年、滞在した300人のうち10~15%が島で就職した。担当者は「地方の価値観を一方的に押し付けず、地域が都市部の人材を活躍させるかどうかが重要だ」と語っている。初期の移住促進から次の滞在人口創出、そして今は関係人口の増加による「関係地域循環共生圏」を、島外2500人と自治体10、企業20でつくろうとしている。関係人口を準主役から対等なパートナーとしたのがいい。
昨年の瀬戸内国際芸術祭の来場者数は約108万人で、過去最多だった19年の約118万人に次ぐ規模となった。「瀬戸芸」の特徴は芸術家の創作活動に島民も参加することで、それが島の魅力を生み、移住に進む人も増えている。
多田則明
(中公新書 定価1056円)





