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「中国共産党が語れない日中近現代史」兼原 信克、垂 秀夫 著 【書評】

 (新潮社 定価1166円)
 (新潮社 定価1166円)

 中国の近代史は、共産党の秘密主義と宣伝工作によって、大きく歪(ゆが)められてきた。これを痛感してきたのは二人著者である前中国大使の垂(たるみ)秀夫氏と、安倍官邸で外交のキーマンだった兼原信克氏。

 二人は、中国共産党によって漂白された近代中国史と日中関係史を、事実に基づいて上書きする必要があると考え、この対談が試みられた。二人の立脚点は両国の歴史を「相互に影響を与えあった一体のもの」として見ること。

 両国の課題は共通していた。工業化に遅れたアジアの国として富国強兵を成し遂げて、西洋から押し付けられた差別を克服し、近代化を成し遂げること。日本は中国に遅れて出発、大東亜戦争で失敗したが、こっち側(西側陣営)に入って成熟した民主国家に生まれ変わった。

 中国は改革開放の40年で急速な工業化を成し遂げ、軍事的にも巨大な存在になったが、あっち側(旧共産圏)に行ったまま、帰って来ない。毛沢東も習近平も自由思想は理解できない指導者。

 著者らは、日本の幕末から、中国は清朝末期から、両国の交流の足取りをたどってゆく。孫文や蒋介石に限らず、辛亥革命に関係した人物はほぼ全員が日本で学んだ。軍閥の巨頭・袁世凱(えん・せいがい)も、陳独秀(ちん・どくしゅう)ら中国共産党の創設メンバーの3分の1は日本への留学組。社会科学用語の多くは、日本で翻訳された言葉がそのまま使われている。

 日清戦争から始まって習近平の中国に至るまで、尖閣問題、米中接近、香港の地位など、新たな視点から見せてくれて興味をそそる。さらに盧溝橋(ろこうきょう)事件以降の共産党への日本の誤った対応など、数々の失敗を指摘するとともに、二人は同じ結論に導かれる。それは日本外交における戦略的思考の欠如だ。

 長期的戦略を欠いた外交は短期的で場当たり的な対応に終始し、未来に生かされることがなかった。日本のヴィジョンが問われているのだ。

 増子耕一

 (新潮社 定価1166円)

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