トップ文化書評真珠湾攻撃の“定説”覆す 『真珠湾攻撃 ルーズベルトは知っていた』 白松 繁著【書評】

真珠湾攻撃の“定説”覆す 『真珠湾攻撃 ルーズベルトは知っていた』 白松 繁著【書評】

ミネルヴァ書房 定価3850円
ミネルヴァ書房 定価3850円

 先の大戦における日本軍による真珠湾攻撃について、フランクリン・ルーズベルト米大統領は直後の議会演説で「日本は意図的に合衆国を欺こうとした」と非難した。結果、日本軍が平和交渉中に通告なく「騙(だま)し討ち」したとの説が広がった。

 「リメンバー・パールハーバー」の合言葉の下、開戦反対の米世論が一気に逆転し、3年8カ月後には原爆が投下され、それすら正当化されてしまった。

 本書は、日本による「騙し討ち」の通説に対し、米国による日本外交暗号解読の実態解明を中心に緻密な検証を行い、ルーズベルトが攻撃を事前に察知していたことを立証している。ルーズベルトに近い政府関係者の証言も多数そろえている。歴史観の転換を迫る挑発的な一冊だ。

 そもそも、反戦を誓って大統領に3選したルーズベルトが戦争作戦をしたこと自体が国民に対する裏切り行為である。ルーズベルトが“適切な”行動を取っていれば、米国民の犠牲は最小限に抑えられた。そういう意味でもルーズベルトは“戦犯”なのだろう。

 著者は、真珠湾攻撃の問題の真相を知るために米公文書館を何度も訪れたり、米オークランドにある米退役軍人ロバート・スティネット氏の自宅を訪れた。暗号解読を含め、存在するあらゆる一次資料を点検。複数の視点から状況証拠を緻密につなぎ合わせたのが本書だ。

 東京大学大学院の在学中にルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていたと結論付けた歴史研究家の杉原誠四郎氏が監修しており、権威付けている。

 戦後80年が過ぎたが、中学・高校の歴史の授業では先の大戦を含む近現代史はいまだにほとんど扱われていない。本書には資料や図表が多くちりばめられている上、注釈もかなり多い。第2次世界大戦の全容を学ぶ副教本として手元に置いておきたい一冊だ。

豊田 剛

ミネルヴァ書房 定価3850円

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