
背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され有罪確定になり、さらに「余命」宣告を受けるなど、波乱万丈な人生を生き抜いている評論家・佐藤優氏による定年後の人生の手ほどき本だ。 2020年に還暦を迎えた著者は、ロシア大使館勤務時代に、生活必需品も足りておらず自由のない暮らしを経験。大病を患っても、日本の高額医療費制度のおかげで手術・入院費用を抑えることができ、「非常に助かった」と実感している。日本には定年を迎えた人々が「本当に幸せだ」と感じる条件が全て揃(そろ)っていると実感しているのもうなずける。
定年を迎えることは終わりではなく、新しい始まりなのだ。「残された人生の時間を、ストレスなく生きることに集中すべき」と考える著者が、定年後の心の持ち方、カネの使い方、時間の使い方、交友関係、家族関係、退職後の仕事、趣味から恋愛に至るまでアドバイスをするのが本書だ。
人は年齢と共に衰えていくという前提がある。著者が定年後に例える動物はナマケモノだ。年相応の行動を取って、背伸びせずに出費を抑えながら「守りを固める」。起業などの無理な挑戦はしないで「人生の流れに身を任せる」よう提案する。
定年後に投資すべきは、金融商品ではなく、第一に自身の健康、その次に家族であると説く。その上で強調しているのは読書の大切さだ。
「読書習慣がある人とない人では、人生の充実度に差が生じる」と記している。図書館を活用しながら、現役時代に忙しくて読むことができなかった本に触れることで、余生が充実する。
著者は敬虔(けいけん)なクリスチャンで、死生観はプロテスタントの価値観に基づいている。共感できない部分は、著者の主観と思って読み流せばいいが、定年後の人生のヒントがちりばめられている。
本書の帯には「知の巨人がたどり着いた人生の最終結論」とあるが、期待し過ぎずに肩肘張らずに読むことをお勧めしたい。 (豊田 剛)
(飛鳥新社 定価1089円)





