
老獪で謀略にたけた民族
二人の著者が中国の国民性を主題にして日韓中の文化の違いを論じた対談集。対談はテーマを決めて8回行われ、月刊『WiLL』(2024年11月~25年5月号)に掲載された。
石平氏は漢民族出身の元中国人で、金文学氏は朝鮮族出身の元中国人。二人とも日本に帰化した知識人で、学者として活躍している。二人の語る中国人像は実際の生活体験によるもので、日本人の誤った先入観を正してくれる。
中国で何が起きているのか、外から見て分からないことが多過ぎる。今年は日本にとって戦後80年の節目の年。中国では「抗日戦争80年」と伝えられた。聞き流してしまいそうな言葉だが、ここには二つの誤りがあると二人は指摘する。
一つは「80年」という年。終戦の1945年に中華人民共和国は存在せず、成立は4年後の49年で、正しくは「76年」。
もう一つは「抗日」で、日本が戦ったのは中華民国(蒋介石の国民党軍)だった。中国共産党は日本と手を組んで戦わず、国民党軍と日本とを戦わせた。国民党は力を消耗してしまい、共産党との内戦で敗れ、台湾に逃げた。そして共産党が天下を取る。抗日はなく、毛沢東は日本に感謝した。
1937年に起きた南京大虐殺についても、現地事情と中国の歴史的背景から虚構だったことを示し、それが問題にされた時期と虚構の理由を示す。
元中国人らの語る中国像は、日本人研究者らが語ってきたのとは根本的な違いがある。儒教がそうであり、日中間で起きた出来事がそうであり、背景となる歴史観、美意識、価値観、言語など違いを明らかにしていく。そこから日本人がどう向き合い、交流すべきなのか、貴重な助言が出てくる。
王朝の興亡を繰り返してきた中国人は、他のどの民族よりも老獪(ろうかい)で謀略にたけた民族だという。利を追求し、闘争を好み、相手を制圧し、消滅させる戦略を実行。中国問題を考える上で貴重な対談集だ。
増子耕一
(ワック株式会社 定価1210円)





