
気候変動をはじめコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を機に食料安全保障の重要性が認識されたのを背景に令和6年、食料・農業・農村基本法が改正された。農水省で食糧部長や畜産部長、農村振興局長などを務めた著者が、平成21年の民主党政権下から現在までの農政改革を論じている。
令和の米騒動の最大の原因は生産者、耕作地の減少に加え、高温障害による米不足で、約700万㌧の需要に対して生産量は約660万㌧だった。背景にあるのは米価を市場に任せる1970年代からの減反政策で、2018年に廃止されたが、実質的には続いている。
政府による米の生産・流通・消費の管理が始まったのは大正7年の米騒動がきっかけで、それを引き継いだ食糧管理法により1967年には米の自給を達成したが、予算が2兆円にも膨らんだことから、米価を市場で調整する減反政策に移った。合わせて、1人当たり米の消費量は118㌔をピークに減少し、現在は約50㌔。米は作っても赤字が常態化し、生産意欲が失われた。 戦後の農政は、一貫して規模拡大による生産性の向上を目指してきたが、中山間地が4割も占める日本が、海外との圧倒的な競争条件格差を是正するには国境措置が不可欠である。
ところが、環太平洋連携協定(TPP)などで関税は削減し続けている。EUでは農家への直接支払制度で農産物を守っているが、日本はどうするのか。
最近の米高で多くの農家が赤字経営から抜け出せると言っているように、著者は消費者を含め持続可能で合理的な価格形成が肝要だとする。農業には食料生産のほかに環境保全や防災、そして何より農地を有する地域社会の維持という大きな役割がある。
自然と触れ合う農作業は、健康長寿にとっても好ましい。日本人の生き方としても農業を見直すべきだろう。
多田則明
日本農業新聞 定価2200円





