トップ文化書評「天気のからくり」 坪木 和久著 観察体験に基づく気象学 【書評】

「天気のからくり」 坪木 和久著 観察体験に基づく気象学 【書評】

新潮社 定価1815円
新潮社 定価1815円

本書の帯紙に、観測気球からスマホで撮影した地球大気の写真が使われている。美しく感動的な画像で、地球の表面を白い大気が包んでいる。それは薄くて、少しまだらで、暗い宇宙との境目にほの青い靄(もや)が均一にかかっている。

「はじめに」によると、2013年8月、蒲郡市生命の海科学館近くの公園から観測気球が放たれ、上昇しながらスマホで大気と地表を撮影。高度5キロメートルで気温は零度。16㌔㍍でマイナス76度。さらに上昇すると気温は高くなり、25キロメートルでマイナス17度まで上がったという。

大気は極めて薄い膜のようで、繊細ではかなく美しい、という。著者は気象学者で、この大気で起きる無数の現象を研究している。風が起き、水蒸気が流れ、雲ができ、積乱雲が立ち、豪雨が発生する。

数十年前の気象学は天気図を用いた経験的な天気予報しかなかったが、現在はコンピューターを用いた気象の数値予報が行われている。

本書は気象学の本で、台風と豪雨、四季、地球、雲などをテーマにして、現代の気象の特徴と関連させて書かれているが、文章を書く際には、その対象となる気象の方程式を思い浮かべながら執筆したという。

その文章の魅力は、観測の体験そのものに基づいて気象現象を論じていることだ。こう語っている。「しかし知っていることと観測により実際に目の当たりにすることとはまったく別物であることに、大きな驚きを感じました」

地球の温暖化で猛暑、豪雨が増加している。著者が注目したのはその大気の中で起きている隠されたからくりなのだ。積乱雲の内部で何が起きているのか、集中豪雨をもたらす帯状降雨帯はなぜできるのか、雲はなぜ落ちてこないのかなど。

空は「くう」ではなく空気の水とエネルギーが満ちたもの。そこには人知の至らない未解決問題が幾つも残っている。本書は気象学の最先端を示したエッセー集だ。

増子耕一

(新潮社 定価1815円)

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