
著者は高校3年の処女詩集『適切な世界の適切ならざる私』で中原中也賞を過去最年少18歳で受賞した詩人。NHKテレビ「ことばと生きる」で辞書編さん者・飯間浩明氏との対談が面白くて近著を読んだ。
書名は詩「大きくなるために必要なこと」の一節「『大人』をお休みする日があっても、それは『わたし』を生きるため。」から取られている。冒頭の「自分の機嫌は、自分でとる。そう努めることが、よい『大人』の秘訣でしょうか。」は茨木のり子の「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」を連想させる。人の成長と言葉の成長という側面があるのだろう。
前掲詩は「遠ざかっていくことを後ろめたく思わなくていい。生まれた距離の分だけ、大切な人を気にかけるようになった。傷つくことも勇気なんだ。湯舟で涙の粒を飲み込んでわたしたちは、少し大きくなった。」と結ばれる。
大人になるとは人との適切な距離を取れるようになることだが、試行錯誤が伴う。近づき過ぎて傷ついたり、離れて孤独になったり。でも、それを繰り返しながら生きていくしかない。そんな自分を言葉で表現することで確認し、反省しながら深めていける。誰もがそうやって成長していくのだろう。
「わかるよ」は、「わたしはもう、わたしを投げ出さない。自分を育て直すために、まっすぐ 愛を注ぐのだ。『わかるよ』と過去の自分に強く頷いて、奪われてしまった、たくさんの声たちへ。わかるよ。あなたの傷ついた心を受けとめて、世界が あたたかく満ちていく気がした。」
人生とは自分で自分を育てていく物語かもしれない。人は一人では生きていけないから、周りの人たちとの関係性の中で、共感を求めながら自分育てをしていく。その言葉の記録が物語になる。多田則明
角川春樹事務所 定価1760円






