トップ文化書評『僕には鳥の言葉がわかる』鈴木俊貴著 動物も言語を使用している【書評】

『僕には鳥の言葉がわかる』鈴木俊貴著 動物も言語を使用している【書評】

『僕には鳥の言葉がわかる』 鈴木俊貴著 小学館 定価1870円

著者は2022年8月、ストックホルムで開かれた国際行動生態学会で基調講演をし、「動物言語学」について語った。

―過去、言語はヒトの固有のものだと考えられ、動物の鳴き声や仕草は感情の現れと説明されてきたが、言語がヒトだけ突然進化したとは考えにくく、言語使用の能力は他の動物にも共通にみられるはず…。

こう動物言語学の枠組みを語り、研究してきたシジュウカラ語を紹介した上で、その方法は他の動物にも適用できると述べて、大喝采に包まれた。25年には英国の動物行動研究協会から栄誉ある国際賞を受賞。

著者は研究成果を講演会で語ったり、国語の教科書に寄稿したり、ラジオやテレビに出演して披露してきたが、本書は初めての著書。

野鳥を観察し始めたのは高校生の時。お年玉で双眼鏡を買い、バードウオッチングにはまっていく。動物行動学の本を読み、観察がそのまま学問になっていくことを知り、研究者を目指して大学に。

運命の出会いは3年生の冬、軽井沢の国設「野鳥の森」。シジュウカラやコガラはじめカラ類その他の群れに出会い、追っていく。前方から「ディーディー」というコガラの声が聞こえてくると、群れがそっちへ急ぐ。行ってみるとヒマワリの種がまかれていて、みんなでついばみ始める。

どうして他の鳥にごちそうのことを教えるのか。疑問に思って、観察し直そうと、種をすべて回収して別の場所に。約1時間後、シジュウカラが発見すると「ヂヂヂヂ」と鳴きだす。今度はコガラやヤマガラが集まって来る。

観察を続けていると「ヒヒヒ」とシジュウカラの鋭い声。鳥たちは茂みに飛び去った。その場をかすめていったのはハイタカ。1週間の滞在でフィールドノート2冊が埋め尽くされた。声のバリエーションは驚くほど多く、鳥語研究が始まっていく。観察の難行・苦行は鳥への愛ゆえだ。

増子耕一

小学館 定価1870円

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »