トップ文化書評『ふれあう読書 私の縁した百人一冊』(下)赤松正雄著 面白い交遊書評録 【書評】

『ふれあう読書 私の縁した百人一冊』(下)赤松正雄著 面白い交遊書評録 【書評】

『ふれあう読書 私の縁した百人一冊』(下)赤松正雄著  出雲出版 定価1980円

ああ、なんと不思議な本!

これが、本書をめくった私の第一声である。本のタイトルからすれば、ごく普通の書評集のようだが、私が今まで見たことがない中身である。一言で言えば、わが国の全国紙や雑誌でよく見かける「刺し身のつま」的な無味乾燥な書評では全くない。

赤松さんが、取り上げた本の著者に向かって、○○さんと語り掛け、時には笑い声、拍手などもないまぜとなって書き進めているようだ。そして、この50本の書評のおのおの最後のページの後に「他生のご縁」と称する欄を別途に設けて、赤松さんと取り上げた著者との具体的な邂逅(かいこう)、その後の交流などを闊達(かったつ)に語っている。

ということは、彼が幸運にも50人の著者に出会っていることになるのだ。これこそ、ずばりタイトルが示している「ふれあう読書」ではあるまいか。豊かな人脈と深い教養、不退転の好奇心を常に維持している赤松さんにとって、誠に充実したひとときであったはず。

本書に登場するのは、評論家、作家、社会科学者、自然科学者、ジャーナリスト、官僚、政治家など、多士済々な人たちである。それでは内容はいかに。6冊ばかり挙げると、淀川長治の『生死半半』、半藤一利の『荷風さんの昭和』、寺島実郎の『人間と宗教あるいは日本人の心の基軸』、ドナルド・キーンの『日本文学を読む・日本の面影』、河合隼雄対談集の『あなたが子どもだったころ』、御厨(みくりや)貴の『知の格闘―掟破りの政治学講義』などである。実に多種多様な興味深い本とその著者。そういえば、本書には、同じタイトル(上)がある。上下で、「百人一冊」となる。

赤松さんは、本書の「まえがき」に、「春秋に富む若者の皆さんが、己が未来を考えられる際に、参考になれば」と述べているが、現在ある1741市区町村のうち、公立図書館も書店もない自治体は全体の27%に及んでいるのが、日本の現実。さあ、皆さん、本を読みましょう。

法政大学名誉教授・川成 洋

出雲出版 定価1980円

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