
保守系の論客が次々と自民党に愛想を尽かしている。その1人が、著者で、保守系政治学者の岩田温氏だ。
自民党の支持率は右肩下がり。このまま消滅の道をたどるのだろうか。いや、「すでに死んでいるのかもしれない」という著者。
「自民党が消滅するのは極めて容易である。現在の路線を歩み続ければよい」。すなわち「日本の歴史を軽んじ、国益を無視し、自らの利権にしがみつき続けるだけでよい」と言う。
著者は左傾化と左翼・世論迎合の路線を問題視している。その代表的な問題は、現在、国会で激論されている選択的夫婦別姓制度だ。これを認めれば日本の家族のかたちが大きく変わることは明白にもかかわらず、党内に強硬に反対する議員が少ない。
なぜ、自民がここまで保守層の支持を失ってしまったのか。2022年7月8日、安倍晋三元首相がテロの凶弾に倒れたのがきっかけだ。
以来、岸田文雄内閣はテロ容疑者が個人的恨みを持っていたとされる宗教団体と関係断絶をした。そして、エマニュエル駐日米大使の意のままにLGBT理解増進法を成立させた。
間もなくして、派閥パーティーにおける政治資金の不記載、いわゆる「裏金問題」が発覚。これがきっかけで派閥が解消され、党の求心力は一気に低下した。
関係断絶、LGBT理解増進法、派閥解消のいずれも必要のないことだった。
“たられば”はいけないかもしれないが、もし安倍氏が存命であれば、簡単に野党の要求をのんだりマスコミに迎合したりすることはなかったのではないか。
著者は、国益を害するものとして左翼メディアを厳しく批判する。一方で、政府・自民党の広報紙並みの論調の読売新聞への評価も低い。日本を侵略国家と決め付け、総理大臣による靖国神社参拝を絶対悪とする姿勢を問題視している。産経新聞、雑誌「正論」「WiLL」などへの寄稿集で、一気に読み進めることができる。日本を消滅させないためにはどうしたらいいのか、考えさせてくれる。
豊田 剛
産経新聞出版 定価1870円