トップ文化書評『ファラオ』馬場匡浩著 古代エジプト王権の盛衰【書評】

『ファラオ』馬場匡浩著 古代エジプト王権の盛衰【書評】

『ファラオ』 馬場匡浩著  ちくま新書 定価1056円

 ファラオは古代エジプトの王のこと。

 紀元前3千年~紀元前30年ごろまでファラオは存在した。約3千年間で240人以上の王が誕生した。王の使命はエジプト世界の安寧。

 トップであるファラオの下には宰相(内閣総理大臣)がいた。その下に、宮中関係・地方自治・租税関係などの高級官僚が続く。

 エジプトの王朝は30ある。エジプト学者は第××王朝と呼ぶ。第3王朝の時代に絶対的な王権が確立した。

第4王朝のクフ王は、最大のピラミッドを建設した。第6王朝以降は王権が衰退し、不安定な状態が続いた。それでも、万世一系ではないが、王朝は継続していた。

有名なツタンカーメン王は第18王朝。1922年、考古学者のカーターらが発見した。王は19歳で没。左足に疾患があったらしく、杖(つえ)をついていた。

ラムセス2世は第19王朝。王家ではなく将軍の系統。在位67年、90歳まで生存。王妃を含めて8人の妻がいた。100人以上の子をもうけた。最も偉大で強力な王。大王と言われた。

第20王朝のラムセス3世を最後に、国土全体を統治する王は消えた。最後の千年間は隣国からの侵略が多かったが、侵略者はエジプト文化を尊敬した。

王朝末期のクレオパトラ7世は、ローマ帝国との戦いの中、ローマの傀儡(かいらい)になることを拒んで自害。コブラで自身を噛(か)ませたと言う。ギリシャ系の血筋だが、エジプト文明を尊んだ。

ミイラ製作の全工程は70日。心臓以外の内臓を全て摘出。ナトロンという鉱物を詰めて乾燥させた。今はミイラをエジプト国外に持ち出すことはできない。研究者はCTスキャンなどの非破壊分析を採用している。

著者は考古学者。発掘ではエジプト人の作業員との信頼関係が必要、と言う。ピラミッド運営の肥大化が王権衰退の原因、との指摘は重要だ。

文芸評論家・菊田 均

ちくま新書 定価1056円

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