
占いや霊能者というのは、色物扱いをされがちで、どこかうさんくさいイメージがある。
要するに、怪しげなオカルト的な話になるか、科学的ではないということで全否定的なアプローチになりやすいのである。
本書の場合、そのようなケースとはやや違っている。
ルポライターであるから仕事として客観的な見方をしているが、その半面は好奇心、要するにオタク的な興味から霊能者と呼ばれる人に会いたいというミーハー的な姿勢がある。
サブタイトルも「『本物』は存在するのか」とあって挑発的だ。
著者は、ただ霊能者と呼ばれている人に会ってみることに関心がある。偽物を見破りたいということよりも、本物がいたらいい(面白い)というほどの関心である。
なので、ルポをしながら霊能者と聞けば会いに行くという数十年にわたる記録をまとめた本書だ。
獅子の力を宿した能力者、普段は陶器屋の主人、ヨガのインストラクターから転身した占い師、守護霊を見る人、スピリチュアルなお見合いおばさん、天使の使いを名乗る美少女、ヒーリングフードを作る料理人など、一風変わった「霊能者」たちが次々に登場する。
そのバラエティーに富んだキャラクターには、それこそ本物感を装うための演出としか思われないほどだった。
ルポライターの著者から見ると、どうしてもそのほころびや仕掛けが見えてしまうのである。
その意味では、なかなか本物らしいケースには出会わなかったが、最後にそれらしき本物めいた人物に出会う。
だが、それも会ってから時間がたってから思い当たるといったもので、もう一度会いたいと思っても、その行方は分からなくなっている。なんだか犯人が分からないミステリーのような顛末(てんまつ)だが、それもまたそれらしいオチという気がする。
羽田幸男
PHP研究所 定価1870円