トップ文化書評『あした出会える樹木100』亀田 龍吉著【書評】

『あした出会える樹木100』亀田 龍吉著【書評】

もう一つの天体を旅する楽しさ

山と渓谷社 定価1760円
山と渓谷社 定価1760円

散歩をする楽しみはいろいろある。軽い運動になるのでリラックスし、考えにひらめきがやって来ることがある。そしてそれを飽きさせないものにしているのが、花々や鳥たちに出会えることだ。

本書は「散歩道の図鑑」シリーズの中の一冊で、樹木を扱っている。街角や庭や公園で出会える身近な樹木を100種選んで紹介している。

著者は自然写真家で、多くの観察体験を背景にしているので、写真は被写体を正確に捉えて美しく、並べ方にも工夫がしてある。その樹木を知らない人でも認識しやすいように、樹木の全体、葉、花、実など、特徴を分かりやすく示している。

先日、街を歩いていたら愛らしいピンク色のツバキに出会った。この図鑑によるとオトメツバキ(乙女椿〈ツバキ〉)というそうで、ユキツバキ系の一品種だという。ユキツバキは日本海側に自生しているツバキで、太平洋側のヤブツバキのようには背丈が大きくならない。こう解説する。

「花びらの淡いトーンの重なり合いが作り出す幾何学模様は、近くで見ると吸い込まれそうな美しさです」。本当にその通りなのだ。「それは八重咲きの中でも特に多くの花びらが花の中心部まで密に重なり合った千重咲きという形態で、本種の特徴でもあります」

乙女椿はそのイメージにぴったりだが、あまりにも美しいので、門外不出にとどめておきたいというので「お止め(お留め)椿」になった、とも紹介している。花びらが密過ぎて、他のツバキが見せる蕊(しべ)が隠され見えないのだ。

今の時期にはハクモクレンが満開だが、先日、目にしたのは十数㍍もある大木。同じモクレンのシモクレンは3~5㍍程度。十数㍍は、本書によると珍しくない樹高で、公園のシンボルツリーになっていることが多いという。

出会う樹木ごとにその来歴や性質や美しさを知ってみると、これはもう一つの天体を旅するような楽しさである。

 増子耕一

 山と渓谷社 定価1760円

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »