
安倍晋三元首相の銃殺事件以来、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、政府から反社会的勢力と断定されている。
それは間違いないのか。本書は、信者をまるで悪質な存在であるかのように伝えた報道の実態を明らかにしようとしたものである。あくまでも中立を貫き、ファクトに基づく姿勢が貫かれている。
著者は家庭連合の報道に極めて常識的な疑念を抱き、徹底的な取材を行った。これまで家庭連合と直接関わったことがなかったため、声を上げてくれる信者探しから始めた。
そこで分かったことは、既存メディアの記者は現役信者を一切取材していないという事実だった。
信者らは、反論だけでなく実情についての説明さえ許されず、報道からも社会からも排除されてしまっていたのである。これはまったくフェアではない。
一貫するテーマは、報道が「救済されるべき被害者と糾弾されるべき加害者」という構図を作り出し「日本を分断した」ということ。報道の影響で政治がゆがめられ、司法も影響を受けていることである。
既存メディアの中で最も世論を煽(あお)っているものはテレビのワイドショーだ。視聴率目的で教団と自民党を叩(たた)くための法廷状態にしてしまった結果、憎悪と不寛容を生んでしまったと分析する。
「宗教二世」の問題については、共産党にも二世問題や献金問題があり、共産党が抱える問題はより根深いことも伝えている。
著者は、東日本大震災時の原発事故を巡る偏向報道や風評被害にも詳しい。「科学的事実を無視するだけでなく、真実を伝える人々を吊し上げ、暴力で口を封じる」
「弱者を救うのをやめて、分断を生み出し、自らの立場を優勢にしようとするだけの存在になって左派とリベラルは死んだ」。著者の言葉は重い。
(豊田 剛)
グッドタイム出版 定価1100円