トップ文化書評【書評】『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』斉藤友彦著  デジタル記事の可能性を探る

【書評】『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』斉藤友彦著  デジタル記事の可能性を探る

『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』 集英社新書 定価990円

新聞記者(共同通信)が、人事異動でネット記事配信の担当になり、どうネットで読まれる記事を作るかを実践的な例を挙げながら紹介している。

著者は長年、記者としてテーマを追求してきたので、それらをまとめて形ある本にしたいと思っていた。

知人の出版社の編集者に相談したところ、「新聞記者って、文章うまくない人が多いんですよね」と言われてしまう。

10年以上も毎日、記者として文章を書いてきた自信がある著者は、その言葉に愕然(がくぜん)とするが、後に本の文章と新聞記事の書き方が違うという事実を知ることになった。

それはネット時代に対応しようと新設されたデジタル向けの記事を出す部に配属されたからである。当初、記者が書いた記事をデジタル記事として配信していたが、その記事がいいものと思ってもまったく反応が薄いのだった。

要するに、バズらないのだ。著者は、その原因を模索しつつ、どのようにすればバズっていくのかを考察する。

その結果、新聞記事はページの枠組みが決まっているので、書き方が文字の省略と結論を先に述べる形式、そして、事実だけを書くので、共感できないものとなっていることに気付く。

ならば、ということで、話題になりやすい週刊誌記事を研究し、そこには分かりやすさと感情に訴えるストーリーがあるとして、それをまねて記事を自分なりに加工していった。

すると、これまで反応のなかった記事が少しバズるようになったが、それでも思ったようではないので、活字離れの若い世代を調査して、感情の「共感」「分かりやすさ」「文章の接続詞を省略しない」などのネットと新聞記事の違いを理解する。

著者はネット記事の成長を認めつつも、やはりそれが二次情報に基づく「こたつ記事」が多いことに危惧し、新聞記事の裏を取る報道の意義も認めて、両者の共存を今後の行方として見据えている。

          羽田幸男

 集英社新書 定価990円

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