トップ文化書評『過去と思索(4)』ゲルツェン著 商人が新しい世界の原型に【書評】

『過去と思索(4)』ゲルツェン著 商人が新しい世界の原型に【書評】

『過去と思索(4)』 ゲルツェン著  岩波文庫 定価1650円

ロシア人作家の自伝的回想記で、この巻では1847年から51年まで、著者35歳から39歳までの出来事と、小論文が掲載されている。西欧に革命の嵐が襲った時代だ。

この間の出来事を拾ってみると、47年2月、ゲルツェン一家は国境を越えてプロイセン領に入り、ケーニヒスブルックからパリへ向かう。3月下旬にパリに着き、モスクワ時代の旧友と再会。10月パリをたち、イタリアに向かい、ローマに着くが各地で起きた民衆運動を目撃し、示威行進にも参加した。

翌48年パリで「二月革命」が始まり「第二共和政」が始まると、一家はパリに戻り、動乱を経験。49年逮捕状が出されてジュネーブに亡命。各国からの亡命者たちと交流し、50年8月にニースに移住。ロシア政府から帰国命令を受けるが拒否し、12月国外永久追放処分に。51年8月、スイスのフライブルク州に市民権を得る。

大きな出来事の一つは、母の財産がロシア政府によって差し押さえられたが、残してきた財産の多くをユダヤ人金融業者ロスチャイルドの手を借りて取り戻したことだ。

体験と人々との交流を通してヨーロッパで起きている激変を把握し、亡命者の現実や、ドイツ、イタリア、イギリス、フランスなど民族と歴史の違いを学ぶ。ゲルツェンの自由な言論活動の背景には財産があった。

彼が知った西欧社会の変化はこうだ。「騎士が封建的世界の原型であったように、商人は新しい世界の原型となった。領主が経営者と交代したのである」(西欧小論集その二)。騎士は富や地位に依存せず、人格の方が重要だった。商人にとって重要なのは商品であり、事業、物で、人格は表には出ない。

プチブル(町人)の影響のもとでヨーロッパではあらゆるものが変わっていく。1830年以降、政治問題は町人階級の問題となる。ロシア人作家ならではの考察は興味深い。(金子幸彦・長縄光男訳)

増子耕一

岩波文庫 定価1650円

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