トップ文化書評『政治家の収支』鮫島浩著 金銭欲よりは権力欲が強い【書評】

『政治家の収支』鮫島浩著 金銭欲よりは権力欲が強い【書評】

『政治家の収支』 鮫島浩著 SB新書 定価1045円

 「政治家の収支」とは、金銭を含む政治家の盛衰、といったものだ。首相・閣僚や国会議員だけでなく、知事や県会議員なども含まれる。霞が関の官僚も登場する。

政治家は贅沢(ぜいたく)には無関心だ。小沢一郎などは、居酒屋チェーン店に普通に足を運んでいた。

金銭欲よりは権力欲が政治家には強い。特徴は、子供時代に英雄の伝記を読んでいる点。国会議員の大半が司馬遼太郎を読んでいる。

銭面では、横浜市長の給与は神奈川県知事よりも高い。人口380万人の横浜市は市町村で全国1位だから、そんなことにもなるのだろう。

都知事の給与は、都議会議員よりも低い。が、都の予算規模は中程度の国家並みだ。知事は、予算編成権・行政執行権・議会解散権など強い権限を持つ。

官房長官は官房機密費を使うことができる。長官に金が渡れば、支出完了。領収書も帳簿も不要だ。

政府は官房長官、党は幹事長が要だ。官房長官は首相と親しい場合が多いが、幹事長は首相のライバルであることもある。幹事長は、国会議員に均等に金(政策活動費)を渡すわけではない。役立つ議員に多く支出する。そうして政治力を蓄える。

官僚で興味深いのが官房長。財務省の場合、次官がトップ、主計局長がナンバー2、官房長がナンバー3だ。各省の「大臣官房」の長が官房長だ。

官房長の仕事は「調整」。天下りの世話、政治家への対応。利権もあり、裏情報もある。さまざまな貸し借りもある。省内の利害関係の調整も行う。「裏仕事」だが、官房長の経験なしに次官になることはない。

内閣官房には「内閣総務官」がいる。官房機密費の管理や国会(首相・閣僚)の答弁書の取りまとめなど、地味だが重要な役割だ。通常の「永田町物」をもう一歩深めた本だ。

    文芸評論家・菊田 均

SB新書 定価1045円

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