
再選したトランプ米大統領が、「多様性・公平性・包括性(DEI)」をはじめとする行き過ぎたリベラル政策にブレーキをかけている。日本政府は西欧より遅れてDEI政策を推進しているだけでなく、移民や外国人の問題を批判すれば「差別主義者」とレッテル貼りされる風潮がある。
外国人問題の中でも、主にトルコから移り住むクルド人がもたらす治安悪化の問題は深刻だ。埼玉県南部で暮らすクルド人の問題を住民の声や行政統計などを基に克明に報告しているのが本書。命の危険を賭して真実を伝えるために戦っているジャーナリストの叫びの書だ。
著者の徹底的な調査・取材により、埼玉クルド人が引き起こすごみ不法投棄、騒音、性犯罪などの問題の実態が知られることになった。
日本に移民申請しているクルド人は、難民認定申請されなくても強制送還されない。申請期間中は在留資格が与えられ、国から保護手当を受け取っている。その間、地域住民はさまざまなトラブルで迷惑を被っているのだ。
まえがきでは、英国のジャーナリスト、ダグラス・マレーが2017年(日本語版は18年)に発刊した『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』(東洋経済新報社)を紹介している。ここでいう「自死」を次のように説明する。
「西欧諸国で各国政府の移民・難民の受け入れ政策で流入した大量の外国人によって治安が崩壊し、社会混乱が発生している現在進行する状況を指している。その変化によって、もともと住む国民が苦しみ、さらにイスラム教徒の移民の増加でキリスト教が作り出してきた西洋文明そのものが変質しつつある」
「日本人の外国人の受け入れ態勢は準備不足」で、「不法滞在の外国人の管理に失敗した」というのが、移民政策についての著者の評価だ。
人口が減り続ける日本にとって移民受け入れをどうするかは喫緊の課題だ。クルド人をはじめ外国人とどう共存し、誰もが住みやすい社会をどうつくっていくのか、ヒントを与えてくれるに違いない。
豊田 剛
ハート出版 定価1760円