
「男はあらゆる闘争に挑んできたが、男女の平等のために闘わなかった。男はあらゆる解放を夢見たが、女の解放は夢見なかった」――なんとも論駁(ろんばく)不能なこの二つの文章は、本書の第1頁の「序文」の1行目と続く2行目に述べられている。
男性支配の普遍性が誕生したのは、人類の誕生とともにあった。人類の子孫を命懸けで産むのは女性であり、男性は外で社会的使命に専従していた。これで男性による女性の支配が制度化してきた。男性は、紀元前4千年紀に文字を、紀元前3千年紀に国家を、紀元前2千年紀に武器を、紀元前1千年紀に宗教を素早くわがものとしたのだった。
これこそグローバル化された家父長制である。近代に至るまで、確かにフェミニズムの動きがなかったわけではないが、それが大きく進展したのは、国王をギロチンで処刑し、貴族制度を廃止したフランス革命(1789~99年)を待たねばならなかった。
だが、人間は平等なりをうたった人権宣言も女性の権利だけは除外され、旧態依然の男女の不平等はそのまま維持された。20世紀になり女性が国政選挙の投票権を獲得した。女性の被選挙権の獲得・拡大もあり、さらに議員の男女平等を促進するパリテ法も採用されるようになった。
2019年10月スペインの下院議員数の男女がほぼ同数であり、閣僚は男性11名女性13名で、女性の方が多い。
20世紀において男性が従来からすれば下り坂に差し掛かってきている。特に二つの世界戦争で動員され、未曽有の戦死者、負傷者を出し、しかも虐殺と崩壊した戦場から生還した帰還兵は戦後社会の中で自らの居場所を見つけるのに苦労した。最近、世界中で蔓延(まんえん)しているのは、男性の自殺が女性よりも3~4倍多いという事実だ。
本書は女性と連帯する「公平な男」になることを提言している。(村上良太訳)
法政大学名誉教授・川成洋
明石書店 定価4730円