トップ文化書評『高倉健の図書係』谷充代著 読書が育んだ名優の生きざま【書評】

『高倉健の図書係』谷充代著 読書が育んだ名優の生きざま【書評】

『高倉健の図書係』 谷充代著

俳優の高倉健さんが亡くなってから10年になる。

本書は、その高倉健さんがかなりの読書家であったこと、本の言葉を大切にしていたこと、苦しい時に繰り返し読んだ本が12冊紹介されている。

読書人というのは、自分の書斎に好みの本を並べて楽しむが、それは本人の精神世界が垣間見えるものでもある。

それで、読書人は他人の書斎の書棚にも関心があるといっていい……。

その12冊の作家のリストを挙げれば、山本周五郎、檀一雄、山口瞳、三浦綾子、五木寛之、森繁久彌、白洲正子などである。

山本周五郎や山口瞳、五木寛之、森繁久彌などはなんとなく理解できるが、三浦綾子や白洲正子となると、ちょっと分かりにくい。

だが、本書を読むと、いかに本が健さんの生きざまを生んできたかが、その読書歴を通じて精神的な履歴書を見る思いがする。

すなわち、凛(りん)とした生き方をする作者の精神に引かれて、自分の理想をそこに求めているからだろう。

この作家や本のリストを見て、今まで映画のスクリーンなどで描いていたイメージとは違った素の顔が浮かんでくる。

健さんが読書をするようになったきっかけは、内田吐夢監督からの「時間があったら活字(本)を読め。活字を読まないと顔が成長しない。顔を見れば、そいつが活字を読んでいるかどうかわかる」というものだった。

著者は、フリーの編集者として高倉健さんと知り合い、以来、1980年代半ばから2000年代まで、プライベートな健さんの「図書係」として読みたい本を探し、その感想などを聞いてきた。

その交流から生まれてくる健さんの思い出、片言、生きざまというのは、一編の詩のようにきらめいている。

一流の人物の生き方の流儀が学べる一冊である。

羽田幸男

(角川新書 定価1034円)

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